ラスマス・フェイバー with フリーダ@ビルボードライブ東京

3年前2年前に1度ずつ訪れたビルボードに、ラスマスさん関連で再び訪れたのでメモ。坂本真綾に釣られたかのように見えるだろうけれど、試聴したフリーダの音源が素晴らしくて、どちらかといえば初来日する彼女の歌声を生で聴いてみたいというのが大きかった。適度にネタバレあり。(9000+α)

いつもの

前回、前々回と同じくステージを真正面から見れて、どの音も綺麗に聴き取れる良い席に座れた。テーブルを囲んだ同行した3人は初めてのビルボードだったらしく、ライブレストランの独特な雰囲気を楽しんでいたように思う。ステージ上は上手からベース、パーカッション、ドラム、キーボード、ピアノという布陣で、中央のボーカルスペースにアコースティックギターとグロッケンが配置されていた。

ビルボードのサイトに記載されていたメンバーを引用しておく。

ラスマス・フェイバー / Rasmus Faber(Piano)
フリーダ / Frida(Vocals,Guitar)
メロ / Melo (Vocals, Keyboards)
ヨアヒム・オッタービョーク / Joacim Otterbjork (Bass)
モンス・ブロック / Mans Block(Drums)
トーマス・エビー / Thomas Eby(Percussions)
リネア・スンデモ / Linnea Sundemo(Background Vocals, Percussions)
special guest:坂本真綾 / Maaya Sakamoto(Guest Vocals) ※東京公演のみ

おじさま?たちの饗宴

まずは男性5人(ラスマス、メロ、ヨアヒム、モンス、トーマス)がステージに上がって3曲ほど演奏した。予習をラスマスが手がけたフリーダ曲に絞ってたので、全て知らない曲だったけれど、BSBを思い出すようなハーモニーのポップスから、パーカスとベースが情熱的なラテン風味の楽曲まで幅が広かった。特にメロのハイトーンボーカルと、そこに重なるラスマスとトーマスのコーラスが凄く綺麗だった。ラスマスのサウンドを一言で形容すると、やっぱり"美しい"になるだろうか。歌詞にもよく出てくる気がするけれど"花"のような品の良さがある。
それと、特にドラムやパーカッションの生音で顕著だったけれど、5つの楽器の音がそれぞれの演者の方向から直接聴こえてきて、音に包まれてる感覚がとても幸せだった。特にドラムは距離が近かった割に他の楽器やボーカルを喰ったりしない最適な音量で、ある種の優雅さすら感じる程。視覚と聴覚がリンクしていることの大切さは、まだ10文字くらいしか書いてないSSA真綾の感想にも関係してくるので、そっちでも言及する予定。予定は予定で次期は未定。

美声姉妹

その後、ラスマスが呼び込んでフリーダとリネアが登場。フリーダの横と後ろを耳上まで刈上げたボーイッシュな黒髪と、BOYとプリントした黒いシャツにドギマギした。妹さんは女性らしいロングヘアーと普通の衣装だったのでギャップも一役買っていたかも。ブラックライト系の照明になった時に、ギターを爪弾くマニキュアがピンクに、艶やかな髪の天使の輪が青く、それぞれ怪しい感じに光ってたのもカッコよかった。
個人的に驚いたのはフリーダの妹であるリネアが来てたこと。予習で見ていた動画の中に姉妹でセッションしているものがあったので、ステージに現れた時は、おー!妹さんも来日してくれたのか、という程度だったんだけれど、演奏が進むにつれてその驚きは嬉しさに変わっていった。グロッケンはシンプルに所々メロディの単音を鳴らすに留めていたけれど、どうやって出してどうやってコントロールしてるんだろうと不思議になる、高音の上ハモが本当に素晴らしかった。そして、フリーダにも当然メロにも言えるのだけれど、マイクに声を乗せるのがとても上手い。パワフルなボーカルという訳では無いけれど、どのフレーズも安定して聴き取れた。

フリーダの1曲目はさっき埋め込んだ『Towers』だったのだけれど、歌い出しの第一声を聴いた時に、CDからかなりキーを下げたんだなと少し寂しく思った。1stアルバムのリリースから5年経ってるわけで、年齢を重ねると人間の声がどれくらい変化するかについては坂本真綾で考えさせられてたので、彼女もそうなんだなーと思ってしまった。が、何曲か聴いてるうちにやっぱり良い声として自分の中で消化できていったので我ながらいい加減である。1stALに偏って聴きこんでたから、余計にそういう印象を持ってしまったんだろう。幼さが削れた分だけ、声にメッセージ性や力強さが加わっていた気がする。儚さは儚いから儚さなのだね。これもSSA真綾の感想に(以下略

ラスマスPの曲に絞ると思っていたので、2曲目が2ndALからの『INDIGO』だったのは少し驚いた。ブックレット斜め読みした記憶なんで、これもラスマス曲だったら申し訳ないけれど、イントロのあの雰囲気を彼が作るとはちょっと考えづらい。もしかしたらリリース順だったりしたのかもね。『Indian Summer』ではメロと姉妹による3声コーラスがとても美しく、最新曲の『hideaway』サビでは「hide away」というフレーズを3回繰り返す部分の、フリーダ→リネア→2人ハモという姉妹のボーカルワークを楽しめた。姉妹って一般的にはどれくらい声が似るものなんだろうか。あんまり身近に例が無いんで見当が付かない。

いっぱい歌うゲスト

そして今宵限りのスペシャルゲスト、坂本真綾もラスマスに呼び込まれる。ロングヘアーを左右に分け、衣装は黒基調でお腹の所がメッシュで立体的に見える不思議な構造だった。まずはラスマスとフリーダがカバーしてくれた『afternoon repose』をセルフカバー。ゲストだから「間違えちゃった、てへ」という訳にもいかないのだろうし、譜面台にあるだろう歌詞カンペをガン見してたのはご愛嬌。2コーラス目のABメロはフリーダが主旋律を歌ってくれたのも嬉しかった。大阪では1曲丸ごとやってくれるんだろうか。

2曲目はまさかの『幸せについて私が知っている5つの方法』をラスマスのピアノ1本でのアコースティックアレンジ。打ち込み色の強い楽曲をどうアレンジするかってのは、このライブ全体を通しても気になっていた部分だけれど、こういう方法もあるのだなぁと感心しつつも、固唾を呑んで聴いていた。テンポをぐっと落として、キーも下げていたけれどピッチコントロールは流石という感じ。大サビ?に入る前の部分が一番気持ちよく聞こえる高さだった。この曲は構造が特殊なんでCD音源で言うと1:57の「くらい」の長音部分。中島愛の「TRY UNITE!」に収録されているRasmeg DUO verみたいに、これも次のオリジナルアルバムにでも収録して欲しい。この曲はやらないかもなーと思ってたのだけれど、よく考えるとライブレストランだから食に関する曲はありだったのかもしれない。

ラスマスが今日のショーのラストの曲として紹介したのが、季節的には正反対に近い『Sayonara Santa』。3曲も尺を割いてくれたのはちょっと想定外だったけれど、それもラスマスの心遣いということで有難く聞き惚れる。肌の状態を確認できるくらいの距離だったから気になったのだけれど、坂本さんピッチコントロールに気を配ってたりする時に目蓋が少し痙攣していたように見えた。ゲスト参加で緊張していたからなのか、元々そういう所があったのか、単に自分の見間違えかは分からないけれど。季節感はさておき、リネアのグロッケンが良い味だしててアレンジも原曲の雰囲気に近く、ほのかに幸せな雰囲気に包まれて本編は幕を閉じた。

スウェーデンの貴公子

アンコールはラスマスのピアノソロで始まった。過去2回の彼の公演はどちらも大人数のジャズバンドを率いてのものだったので、彼の演奏のみをじっくり鑑賞できる場面はあまり無かったのだけれど、この日はキーボードのソロパートや真綾とのピアノソロも含めて、幾度と無く彼の奏でる音に耳を傾けることが出来た。ピアニストが鍵盤に挑む姿勢って人によって様々で見てて面白いのだけれど、ラスマスはその端正な顔立ちや作り上げる音楽に相応しく割とお上品。

アンコールではしっとりとしたピアノソロから緩急を付けつつ『We Laugh We Dance We Cry』へと繋いでいくアレンジが見事だった。打ち込みのイメージがどうしたって強くなるハウス曲を、あんなにも自然にバンド用に組み直せる才能は凄いとしか言いようが無い。パーカッションの音色が肝なのかなぁ。叩く傍らでトーマスは何度かクラップを煽ったりもしていて、4つ打ちのそれはハウスっぽさが漂っていて、自分にしては珍しくクラップを全面肯定できる経験だった。SSA(ry

最後は再びスンデモ姉妹が登壇して、『HIDDEN THOUGHTS』で素晴らしいショーの締めくくり。メロが軽やかに歌うサビに、重なってくる姉妹のコーラスが綺麗だった。こういうグルーヴ感のある楽曲でのベースの役割は素晴らしく大きいのだけれど、ヨアヒムのベースはとても年季が入ってる使い込まれた代物で、それを見てると安心して任せられる気がしてくるから不思議なもんだ。使い込まれてぼろぼろになったギターはあんまり見ないけれど、ベースはそういう無骨な一品を見ることが何故か多い気がする。

おわりに

完全にラスマスを見るための資格になってるビルボード会員だけれども、生で音を味わうことがどれだけ貴重で素晴らしいことなのかを、改めて考え直せたのでとても良い機会だった。良い音を浴びるっていうのは、ちょっとしたマッサージみたいなものかもしれない。いつの日か坂本真綾もこういうところでワンマンをやって欲しいような、そうなったらなったで色々と大変だろうなぁとか、坂本真綾に妹が居たらとか、しょーもないことも色々と考えたけど、久しぶりに長々と書いて疲れたのでここらでお仕舞い。
どっかにセトリが転がってたら後で追記しようと思う。参加した人、読んだ人、お疲れ様でした。(懐かしい)