LIVE TOUR 2015-2016 "FOLLOW ME UP"@ハーモニーホール座間

めっきり更新しなくなってしまったけれど、こんな機会くらいは何か書いておこうと思う。もうじきamazonからSSAのBDも届くし、そっちを見てしまうとライブの記憶も薄れてしまうから。自分なりのフォーマットがあった気がするけれど、あんまり拘らずにダラダラと指の動くまま行きます。当然にセトリに触れているので、ネタバレ嫌な人はご注意ください。(6800)

アルバム雑感

坂本真綾がインタビューで便利に使ってる、コンセプト無いものに名前を付けたみたいな"幕ノ内"というワードは好きではないのだけれど、それでもアルバム新曲は全てが好きと思えたので総体として気に入っている。特に『レプリカ』以外の後半部分のまったりさは、35歳の坂本真綾が歌う音楽としてすんなりと受け止められる。このアルバムを軸としたライブをどういう風に組み立てるのか、お手並み拝見といった気分でツアー初日を楽しみにしていた。

いつもの

会場のハーモニーホール座間は初利用。小田急線で延々と運ばれていくと思い出すのは、やっぱりYCCMツアーの初日の厚木公演だった。もう5年近くも昔の話になるのだね。駅から15分ほど歩くうえ、周囲には公園くらいしかない場所だけれど、1300くらいの適度なキャパで座席等の設備も悪くなく、音響や照明にも不満が無かったので、またの機会があったら訪ねてもいいなと思えるホールだった。
ステージ上の構成は、下手手前にグランドピアノとキーボードでバンマスの河野伸、その奥にコーラスのLyn&高橋あず美、中央奥にベースの大神田智彦、その右にドラムの佐野康夫、上手奥にパーカッションの三沢泉、上手手前にギターの石成正人という馴染みの面々。

本編

神blogからセトリをお借りして、個別に感想を残せそうな所だけに書き足していく。冒頭の入場曲がやたらメルヘンかつファンシーで、まるでオモチャの国みたいな音楽だった。ライブが終わった後に振り返っても、特に今回のツアーとの整合性は思い当たらなかったのだけれど、あれはどういう趣旨だったんだろう。
1.FOLLOW ME

1曲目はやっぱりこれだよね。作られた過程や歌詞のメッセージは今回のツアーの核とも言える曲だけれど、とはいえ本編ラストに配置するには向かない曲なので、冒頭に収まるのはある種の必然。先に入場したバンドの面々がイントロを奏でている間に、照明効果を利用してベースの隣にこっそり移動していて、歌いだしに合わせて突然現れる小粋な演出だった。最前列だったりすると見えてるのかしら。

2.Gift
3.SONIC BOOM

5年前の武道館を思い起こさずにはいられないラインナップ。3曲続けてミディアムなテンポが続いたけれど、なぜか『SONIC BOOM』でお客さんが一斉に座る流れが生まれた。この後のMCで坂本真綾も言及していたけれど、ツアー初日らしいといえばらしい双方の手探り感。静かなA,Bメロからサビでギアが一段上がる曲は、どういうノリで迎えるのが適当なのだろうね。石成さんのギターソロは欲しい所に最適な音量と美しさで鳴らしてくれるので大好きです。

MC1
4.Be mine!
5.さなぎ

坂本真綾が今回のツアーに言及してる記事で、マイナーよりのセトリになるというのを目にしていたので、最新アルバムにある希少なアッパー曲は終盤に回されるだろうと予測していたから少し意外な2曲が続いた。外れた発売イベントのピアノアレンジを例外とすると、今回の『Be mine!』が今までで一番ボーカルの完成度が高かったように思う。『さなぎ』もCDで聴いた時は無茶なサビだと思ったけれど、意外にライブでも歌えてたので、凄いね坂本真綾さん(上から目線)。この日は総じて坂本真綾の調子は良かったと思う。歌詞間違いもそんなに無かったし。

6.アルコ

ライブで聴いて印象がかなり変わった曲その1。CD音源だと菅野さんの編曲による独特の空気感が表に出てたのだけれど、ライブでのマニピュレーター依存のやや凡庸ともいえるアレンジだと、坂本真綾のボーカルワークを思う存分楽しめるミディアムバラードの面が強調されていた。噴飯ものだったCメロ始まりのオケヒっぽい三連符も、佐野さんのドラムによる説得力でこういうのもアリだなと思えてきた。我ながら適当だ。

7.Waiting for the rain

最新のタイアップ曲ではあれどライブで扱うにはちょっと不向きな曲なので、セトリから外れることもあるかなーと思ったけれど演奏された。1コーラス目のサビ頭の入りタイミングを微妙にトチる坂本真綾さん萌え(死語。個人的になんだけれど、「don't be afraid」という歌詞の『ドン』は、もう少し柔らかに歌って欲しかった。自分はアスタリスクを見てないのだけれど、歌詞解釈をちゃんとやると叱咤するような歌い方のが合ってるのだろうか。これもABとサビのギャップ曲ですね。

MC2
8.君の好きな人
9.はじまりの海

座ってゆっくりじっくり音楽を楽しんで貰いたいコーナー。またの名を、初心者泣かせ、あるいは睡眠不足で挑むと危険コーナー。河野さんのピアノ1本の『君の好きな人』は美しいに尽きるんだけれど、どことなく『走る』に通じる盲目的な歌詞が危うさも醸し出してる。CD音源だと違和感があった「僕は何も訊けなかった」の長音も、ライブだと自然な音量で増えていて良かった。『はじまりの海』はステージ奥に向かって設けられた段差に座りながら、エバーグリーンというキャッチコピーに倣った淡い緑色の照明の下で。ややボサノバ風のアレンジがされたアコースティックギターとパーカッションが良い味出してた。石成さんはこの日もほぼ毎曲と言っていいほどにギターを変えていましたね。

10.空気と星
11.DIVE
12.セクレアール(インスト)

厳島に参加出来なかった人もフォローしてくれる『空気と星』の有り難さ。
『DIVE』なんかは顕著だったけれど、このツアーは全体的に照明演出が素晴らしかった。言葉での説明がとても難儀なのだけれど、初めて見る装置が特にいい仕事をしていた。LEDランプ7個が40cmくらいの細長いユニットに一列についていて、そのユニットが柱に沿って10個並んでいる上に、各ユニットは2つの軸で自由に回転することが出来るという代物。ほら、伝わりにくい! その柱が、舞台の上手と下手と天井に計3セット設置されていて、本当に多様な空間演出がなされていたので、見た人はアレだよねーと思ってくれるはず。座席によっては眩しかったみたいだけれど、後ろの席で残念だという人にとっては1つの楽しみになりうると思う。スクリーン演出とか特効とかは一切無かったけれど、それらを補って余りある演出だと思った。この分野の進歩は凄まじいね。
in the silenceツアーを思い出す、河野さんと三沢さんによる衣装チェンジの繋ぎ。曲の後半までタイトルが分からなかったのが少し悔しい。メロディが分かって、歌詞まで出てきてるのにタイトルが30秒くらい浮かばなくてモヤモヤしてた。

13.Tシャツ

雪が微かに降る府中の帰り道を思い出した。アルバム応募特典の申し込みハガキに"坂本真綾のすべての曲の中でいちばん好きな3曲は?"という禅問答みたいな質問があるけれど、10年前だったらこの曲を書いていたと思う。それくらいには好きな曲。バンド編成でようやく聴けたけれど、これもABとサビのギャップ曲でPAが難しそう。
ちなみに前半は赤と黒という武道館の最初の衣装を思い出すカラーリングの衣装で、ここから先はアンコールも含めて白のドレス。

14.まだうごく
15.レプリカ

『レプリカ』のAメロの石成さんギターは要チェック。ここらはクラップを何分で叩くのが正解なんだろうね。ラスサビの半分のテンポになる所とかで客席側も揃ったりすると気持ちよさそうなんだけれども。後で出てくる『プラチナ』のCメロもそうだけれど、基本的にはコーラスのお二方がクラップの音頭を取っていて、手隙の時は三沢さんも参加していた。けれど、真綾楽曲に対する経験値に割と開きがあるんで、ちょこちょこズレが生まれていた。ツアーを進めていく中でどっかしらに落ち着いていくとは思うけれど、それが自分好みの方向であるといいなーという我がまま。もう愚民のなんたらとかは口にしないで生きていきたい。

MC3
16.Hello
17.幸せについて私が知っている5つの方法
18.色彩

シングル収録曲3つとも網羅はちょっと珍しい。来年の頭に来日するラスマスさん、ツアーのどっかでゲスト参加しないかしら。ラスマスさんのビルボードに真綾がゲスト参加するんでもいいけれど。
ようやくFATE/GOのサービスも正式に始まったから一般層への認知度もあって、アップテンポなロックナンバーの『色彩』だけれども、客席にとって盛り上がるのが難しいという部分はSSAと何ら変わらずだった。『ヘミソフィア』と似たようなポジションになりそう。この曲も照明がかっこよかったのだけれど、ドラムの魅せ場であるサビで、極彩色の照明が高速で切り替わるせいで、特定の色の時に佐野さんが見えなくなってしまうジレンマがある。ちなみに、下手の席だと真綾越しに佐野さんを見れて、とても良いです。

19.Life is good
20.プラチナ

新アルバムからのアップテンポを使い果たしたので何を持ってくるかと思ったら意外な1曲が。心構えもなかったツアー初日のお客さんでも、「life is good」の所はすぐに声と腕を上げて盛り上がってたので、これからいい感じに育っていくかも。『プラチナ』はアルバム曲尽くしで難易度高めだったセトリの中で、初参加のお客さんに対するサービスみたいなものかな。

21.かすかなメロディ
22.アイリス

「FOLLOW ME UP」の新曲は全部聴きたかったけれど、一方でやらない曲もあるのは覚悟していて、それでもここまで引っ張られると待ちくたびれたぜ、という感じ。でも曲調はしっとりまったり。『かすかなメロディ』はそのうちビルボードとかで管楽器混じりで聴きたいですね。
そして、『アイリス』はライブで聴いて印象が大きく変わった曲その2。CDでは指揮者がクレジットされたりして、2コーラス目の頭から入るフルートと合わせてクラシックなイメージが強かったけれど、どうしてどうしてバンドによるライブアレンジが映えるじゃないの。坂本真綾の歌詞にしては珍しく物語的で、どこか坂本真綾という人格からは一線引いた楽曲に思えてたのだけれど、『アイリス』という物語の主役を演じているかのような坂本真綾のボーカルは、ドラマチックな石成さんのギターも相俟って感動的だった。恐るべし作曲家坂本真綾

MC4
23.シンガーソングライター
ENCORE
24.これから
25.ポケットを空にして

今の坂本真綾が選ぶ3曲は『FOLLOW ME』と『これから』と『シンガーソングライター』らしい。直近の自作曲という辺りがなんとも彼女らしくて、そうでなくっちゃという気になる。これから全国ツアーに行ってきますと爽やかな幕切れ。

アルバム新曲の中で一番ライブを楽しみにしていた『ロードムービー』が聴けなかったのが残念だけれど、総じて満足度の高いライブだった。会場によって多少のセトリ変更があるとすれば旧譜のアルバム曲部分なんだろうか。次は大晦日のカウントダウンに参加する予定なので、SSAのBDでも見ながらこのツアーがどんな風に成長していくのかを楽しみにしてようと思う。