坂本真綾のポピュラーな楽曲を調べてみた
誰をターゲットにして書くか悩んでいたのだけれど、10年間くらいワチャワチャと坂本真綾を語らってきたフォロワーを対象にすることに。なので、ライト層向けの説明は薄めです、悪しからず。
■前書き
11月27日に坂本真綾の10枚目のオリジナルアルバム「今日だけの音楽」が発売され、それと同時に、各サブスクサービスで坂本真綾の殆どの楽曲が解禁された。
発表は日付が変わるのと同時だったが、twitterのトレンド上位に入り込む勢いで賑わっているのを見て、ふとこんなことを思いついた。
今パブサで言及されてる曲名を集計すると、一般世間的な坂本真綾のランキングが完成する気がする。
— とーかみ (@tookami) 2019年11月26日
坂本真綾は来年で歌手活動歴25周年を迎える。なので、デビュー時は産まれていなかったファンもいる一方、可愛い女子高生だったのに、と当時を振り返れるファンもいる。昔はよく聴いてたけれど、最近の楽曲はよく分からないという人も沢山いるだろう。
そういう新旧や濃淡による母集団の偏りを減らして、広く坂本真綾のポピュラーな楽曲は何なのかを調査してみたら面白い結果が出るかもと思ったのだ。
10年ほど前にも、真綾クラスタ諸氏にお願いをして
坂本真綾ベスト盤発売記念・選曲予想大会、結果発表【楽曲ランキング編】 - tookami's diary
というネタをやったことがあるが、今回はより浅く・より広くという企画となる。
巷でやってる楽曲総選挙の類が個人的に好きなのだけど、投票フォームやルールを作り込んだり、結果発表の動画を作ったりするスキルもない。そもそも楽曲投票に参加するのは、『序曲』こそ今の坂本真綾を表してるんだ!!みたいな面倒くさいファンばかりである。
サブスク解禁というライト層が適度に飛びついてくれるビッグニュースに、これ幸いにと乗っかってみたわけだ。今時分でのコアなファンによるランキングも、それはそれで見てみたくはあるけれどね。
『序曲』は次のオリアルの核に成り得たと思ってる。大袈裟に振り回すトピックでは無いかも知れないけど、20年台への礎になる1曲
— とーかみ (@tookami) 2019年7月26日
■企画概要
今回は、次のようなレギュレーションでランキングデータを作成している。
カウント対象
2019年11月27日0時00分から23時59分までの24時間で、twitterの本文中に『真綾』というワードを含んだpostのうち、ノイズワードを除外指定*1したpostが全部で9,070件。その中から楽曲名をダイレクトに含んでたり、発言の内容から1曲に特定できるpost1,686件をカウント対象にしている。
カウントのルール
・postの中で言及された曲名を手動でカウント
・ver違いはひとまとめ(指輪、風待ちetc)
・1postに複数曲名があったら全部カウント(最多19曲、平均1.3曲/post)
・『DIVE』のようなアルバム名=楽曲名の楽曲は文脈で判断
というように、集計者の主観が強めに混じってるザックリしたものだ。ダブルチェックも挟んでないから、計上漏れや誤カウントもあると思うので、緩い気持ちで眺めて欲しい。
そもそもが単なる呟きであって、集計されることを意識して投じられた票ではない。けれど、ある程度大きな母数を集めれば、意味のありそうな数字にならんかなと期待しての集計である。そして、筆を執ったのは意味がありそうと思ったからだ。
言及されてた曲数は全部で196曲。その全てを書き連ねると夜が明けるので、CDTVリスペクトで上位50曲だけ*2を紹介しながら、新曲や気になった曲にコメント挟んだり、ツイートを引用したりする。
記事の最後に上位100曲のプレイリストを貼っておくので、これから坂本真綾を聴く人の布教用にでも使って貰えれば幸いだ。
■ランキング
では、前置きも終わった所で早速ランキングへ。
50位からCheck it out!!!!(2D絵がクルクルするアレ)
・50位~41位
46位タイ 11票
THE GARDEN OF EVERYTHING ~電気ロケットに君をつれて
birds
パイロット
ユッカ
夜明けのオクターブ
41位タイ 12票
さいごの果実
しっぽのうた
猫背
ホーキングの空に
僕たちが恋をする理由
このゾーンには人気の高いアルバム曲が多くランクインしてる。『しっぽのうた』や『夜明けのオクターブ』のような少女的で可愛い声の歌は、今となってはリリースも少ないし、ライブでもあまり歌ってくれないので、新鮮に感じる人も多そう。
夜明け繋がりで、惜しくも50位には1票届かなかったが『夜明けの風ききながら』にも多くのコメントが寄せられていて、ちょっと意外だった。
新譜からは『ホーキングの空に』がお目見え。サビ頭「解き放て」からのピアノのコードによる緊張の緩和がジワジワと染みてくる。ライブでは打ち込みのリズムをドラムで叩くのかと、楽曲の宇宙観を照明でどう演出してくるかに注目してる。
そんな中で良いなと思ったのは、この方の骨壷表現。
坂本真綾が全曲サブスク解禁されましたので、皆様ミニアルバム イージーリスニング に収録の birds を聴いてください。一曲だけ墓まで持っていけるなら、私は骨壷の中でこの曲を聴き続けます。
— StrSunnO))) (@StrSunnO) 2019年11月26日
では、次のゾーンに行ってみよう。
・40位~31位
39位タイ 13票
プラリネ
37位タイ 16票
紅茶
ポケットを空にして
36位 17票
31位タイ 18票
cloud 9
gravity
スクラップ~別れの詩
blind summer fish
指輪
このゾーンにはバラードやミドルテンポのポップな曲が多くランクインしている。そんな中で異色の『スクラップ~別れの詩』だが、FGO勢の力強い後押しを受けてのランクインとなった。アレやアレやアレの順位が気になるね(フラグ)
また、top50の曲としては唯一サブスク解禁の対象外だったのが『cloud 9』となる。SSWツアーのLive盤からも丁寧に除外されている辺り、著作権の面倒くささが滲み出る。
新譜からは『ディーゼル』がランクイン。勘の良い人はお気づきかもしれないが、今回のランキングだと現役のファンはアルバム「今日だけの音楽」のお気に入り曲に言及し、ライトなファンは昔好きだった曲に言及する傾向がある。
なのでランキングの新旧混ざり具合は、この曲はあの曲よりも人気なのか、と解釈するよりも、母集団がこんな割合なのかと解釈する方が正解に近いと思う。「ごちゃまぜミクスピザ うまくてまずかった」
何も上手くないので、次のゾーンへ。
・30位~21位
30位 19票
光あれ
29位 20票
CLEAR
27位タイ 21票
雨が降る
今日だけの音楽
26位 22票
風待ちジェット
22位タイ 24票
うちゅうひこうしのうた
細やかに蓋をして
DOWN TOWN
ここら辺から、今回の企画の特徴が出てきていると集計しながら感じた。『光あれ』は前述のベスト盤収録予想だと並居るタイアップ曲を押し退けて3位にランクインした程、コアなファンの支持を受けていた楽曲だし、twitterでも熱量の高いコメントが多かった。
企画の目的が広くライト層の好みも汲みとることにあり、コアファンは新譜に夢中だった結果の『光あれ』の30位だが、坂本真綾のキャリアがここまで長く、そして深くなった中で、コア層が全楽曲から選ぶとしたら、今はどこら辺に位置するのか個人的に興味がある。
『CLEAR』や『風待ちジェット』ではCLAMP作品が切っ掛けで坂本真綾を聴いた人のコメントをよく見かけた。本人がよく口にする、人との出逢いに恵まれたというフレーズだが、20年以上続くご縁を考えると全くもって、という気分。
『うちゅうひこうしのうた』はトリビュートのKIRINJIカバーから知ったという人もいて、ライブで頻繁に演奏してくれているKIRINJIに感謝。邦楽畑との垣根を少しずつ崩し続けた25年だった気もする。
新譜からは『今日だけの音楽』と『細やかに蓋をして』が登場。最後に『今日だけの音楽』を置いて、途中は「夢の中で出会った他人の歌う曲」と言う公式解釈なので、シングル曲を差し込んでもコンセプト破綻はしないのだけど、新曲で統一したのが潔い。
サブスク解禁がどのタイミングで確定したのか、私、気になります。
と言うことでTOP20へ。
・20位~11位
20位タイ 25票
宇宙の記憶
火曜日
19位 28票
Hidden Notes
18位 32票
お望み通り
17位 33票
レプリカ
16位 37票
15位 42票
Buddy
14位 43票
13位 45票
12位 52票
タイアップ付シングル曲とアルバム新曲が全力で殴り合うゾーン。
菅野よう子作品はさておくとして、シングルでも作品を切り口にして語られる曲と、楽曲提供者を切り口にして語られる曲とが割と分かれていた。『レプリカ』と『マジックナンバー』が前者で、『宇宙の記憶』と『Buddy』が後者だ。
ここで、ちょっと話を脱線させる。
舵を切ったのがいつかは定かじゃない*3けれど、強い独自色を持ったアーティストとコラボしていくことは現在の坂本真綾の商業戦略だと感じている。
その戦略は、自身のファンとも、タイアップ作品のファンとも異なる、新しいリスナーに対して露出する機会を作る狙いが当然あるだろう。けれどそれだけに留まらず、坂本真綾の”らしさ”を大胆に浮かび上がらせる手段として、この種のコラボを捉えているという仮説を提唱してみる。
つまり、彼女がタイアップ曲の作詞をする際に、自分自身と作品のテーマが重なる部分を懸命に擦り合わせて言葉を紡ぐように、自分と異質の音楽の中に飛び込んでも、それでも塗り潰されず残る部分にこそ、坂本真綾の歌の"らしさ"が現れることを期待してのコラボ戦略だ。
好みに合わない人からは、まるでカラオケだという批判も飛んできやすい、先方の作家性に寄せたコラボ手法ではあるけども、『everywhere』以降、坂本真綾自身が作曲者として明確な自分のカラー・世界観を生み出しているので、いざという時には安心して戻れる家がある。迷走し続ける事態にはなりにくい。
菅野よう子の下を離れた後の音楽活動について、「作曲者が自分の過去の音源を勉強して、こういう曲を歌うのではないかと寄せてくれる」という趣旨のインタビューを読んだ記憶がある。
「夕凪LOOP」から「かぜよみ」辺りまで、オーダーメイドのように坂本真綾にフィットすることを狙って作られた楽曲群から、コラボ先アーティストの色が強く残ってる曲に飛び込み、身を削りながら”らしさ”を探っていく楽曲群への”シフトチェンジ”を見て取ることは的外れだろうか。
菅野よう子時代とその後という2分法は、流石に賞味期限切れだと思う昨今なので、こんな切り口はどうだろうと思って書いてみた。思い付きの付け焼き刃なので色々と弱い部分が多い。今後ものんびり考えていきたい。
新譜からは『火曜日』『Hidden Notes』『お望み通り』『トロイメライ』がランクイン。『火曜日』は2サビで1サビと同じ歌詞を繰り返しながら、「振り向いて」という追加部分での転調が機能美過ぎて最高だ。『お望み通り』で見せる坂本真綾の毒、ライブではどんな悪い笑顔で歌ってくれるのかが楽しみ。あと、頭サビか頭Aメロかで意見を交わしたい。どちらにせよ曲構造と加速感がお気に入り。
というところで、残すは11曲。まずは4位まで。
・10位~4位
10位タイ 54票
ループ
ユーランゴブレット
9位 55票
8位 57票
7位 60票
約束はいらない
6位 66票
オールドファッション
5位 71票
Be mine!
4位 74票
色彩
それぞれ90年代、00年代、10年代の坂本真綾の代表曲とも言えるシングルと、新譜から2曲がランクイン。
川谷絵音の楽曲については、アルバムの宣伝面でのリード曲だったこともあって、露出も多かっただろうし賛否両論とも見かけた。特に歌詞について引っかかった人が多かった印象。紅茶・コーヒーは合っていて、味噌汁は合っていないと言われるのも不思議な話だけれども。所帯じみた雰囲気がNGなんだろうか
そしてアルバム「今日だけの音楽」から最も言及が多かったのは『オールドファッション』となった。こちらはバンアパ荒井さん、編曲北川さん、ドラム佐野さん、坂本真綾の歌詞と、切り口は様々だけれど、総じて好意的な感想に終始してた。個人的には『coming up』と並んで、踊りたくなる真綾曲だ。
シングル曲で印象的だったのは『ループ』で言えばツバサ、『色彩』で言えばFGOと、タイアップ先に寄った言及が多い近年の作品と、この曲達をよく聴いてたなぁ、とまとめて挙げられがちな初期の作品との違いだろうか。
音と映像では記憶の鮮度が異なるのもあるけれど、同じ20年前の作品でもアニメと音楽だと古臭さには大分差が出そう。菅野よう子の作る音の賞味期限の長さもありそう。
そんな中で『Be mine!』は曲名とsportifyのURLだけ呟く、シンプルなpostが比較的多かった。なんでだろね。
・3位~1位
さて、いよいよ残すところはトップ3。
3位 86票 逆光
FGOの第2部主題歌の『逆光』が、第1部主題歌『色彩』に続いて3位にランクイン。集計前の想像通り、この2曲と『レプリカ』と『スクラップ~別れの詩』にまとめて言及してる人はとても多かった。『幸せ5』発売の裏でゲームの開始が遅れ続けた時はどうなることかと思ったけれど、タイアップの爆発力って凄いもんだ。
この曲はまだゲーム本編でクリティカルな使われ方をしていないので、2020年のどこかで一旋風を巻き起こす気がしている。楽曲も勿論評価されてるのだけれど、シナリオに絶妙に寄り添ってるのであろう作詞が評価を下支えしてる形だ。
世間的にはKinki Kidsへの『光の気配』作詩提供がホットなトピックであるし、坂本真綾のエンタメにおける総合力の高さを感じる昨今。編曲スキルはないけれども、他人をプロデュースする未来も絵空事じゃなくないのかも。誰をかは分からん。
続いて第2位
2位 107票 ヘミソフィア
ついに大台の言及数3桁に突入。第2位に輝いたのはラーゼフォンOPの『ヘミソフィア』。正直に言って、ここまで多いとは想像していなかった。機械的で、忙しなくて、気難しくて、構成がドラマティックで、ポピュラーとは真逆のイメージだった。
でも、表彰台に輝くくらい、Perfumeが口ずさむくらい、岩里さんとの作詞家対談で本人が取り上げ、アコースティックアレンジしてまで厳島セトリに入れるくらい、人気のある曲だというのを、自分が再認識するいい機会になった。
ということで、今回の企画でお届け最後の1曲である。
坂本真綾で最もポピュラーな曲はこの曲だ。
1位 232票 プラチナ
2位にダブルスコアでの圧倒的な1位。カードキャプターさくらのオープニングソング『プラチナ』が坂本真綾の最もポピュラーな曲という結果になった。
が、ネタ晴らしをすると、集計期間中にファミリーマートの店内放送で『プラチナ』が流れていたらしく30票位は下駄をはいている。けれど、除外しても結果は揺るぎようもない。
シングルのセールスで言えばそこまで抜けては無いけれど、作品と楽曲の相乗効果なんだろうか。本人の歌唱機会も多ければ、カバーされることも多い。
文字通り、万人に愛されている1曲だ。
断じて、菅野よう子のインフル罹患を悔やむ歌では無い。
■あとがき
最後まで読んだ人はお疲れさまでした。疲れたので文体変えます。
ということで、1位から100位まで、sportifyにある曲は突っ込んだプレイリストです。
最初からtwitterでこれを貼れば済んだ話ではあるのだけれど、折角9時間も掛けて集計したデータだし、いきなり1位を見てフーンってなるよりは、ワクワクして貰えるかもしれないと思って書きました。
サブスク解禁で新たに真綾を聴き始める人にとっては、頭から順に聴いていくと効率よく坂本真綾について他人と話せるはずです。
明日から始まる坂本真綾のツアーの前に、公開まで漕ぎつけられてホッとしてます。座間で握手と言いたいところだけど、こんなエントリー作っておきながら座間は不参加です。
同日・同時間・同レーベル・同ディレクターの安野希世乃のライブツアー初日に参加することにしました。座間を譲っていただける、ありがたい話もあったけれど、文字通りで2019年一番に悩んだ末に抽選結果に従うことにした。お互いに楽しみましょう。
オーチャード2daysとカウントダウンは参加予定なので、そちらでお会いしましょう。企画の感想とか、ポスト菅野時代の区切り方とか感想もらえたら嬉しいかな。
読んでくれて、ありがとうございました。