大英博物館 古代エジプト展@六本木ヒルズ 森アーツセンターギャラリー

早めに行かないと気づいたら終わってたりしそうだし、午前にTLを見てたら@take_1rowが行く風だったので乗っかって行ってきた。@1983Yも合流して、おっさん3人でジュニア用ガイド音声を堪能してきたのを軽くレポ。(1300+500)
六本木ヒルズなんてセレブの巣窟には基本的に用が無いのだけれど、振り返ってみると夕凪ループのフリーライブや満月朗読館の生朗読など、坂本真綾関係では割と足を運んでる場所だった。むしろ、坂本真綾が関係してないと足を踏み入れてない場所とも言える。近場の金券ショップを覗いたら当日券より200円ほど安く前売券が売っていたので、有り難く回収して森ビルの52Fへ。
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平日の真昼間でも親子連れで割と賑わってたのは、夏休みの終わりに駆け込みで遊んだり、自由研究の宿題を消化するパターンかな。平日でこれじゃ週末は入場規制が敷かれるのだろうし、つくづく良いタイミングで行けたと思う。ギャラリーと冠する会場だけあって、フンフンと頷きながらテンポよく説明文書だけを読んでいけば、1時間くらいで全ての展示を見て回れるボリュームだった。

展示内容

入り口の貸出カウンターで躊躇いなくジュニア用の音声ガイドを借りるおっさんA。ガイド音声1箇所につき3回くらいリピートしながら熱心に展示を見て回ったお陰で、古代エジプトに対する理解がかなり深まった。より正確に言うと、今までの古代エジプト知識がいかに適当だったかを痛感した。
たとえば、ラー、オシリス、イシス、アヌビスといった名前は、日本のサブカルチャーやファンタジーに親しんできた層なら耳馴染みのあるものだと思う。自分の場合は専らラグナロクオンラインというMMOで、これらの名前が付いたモンスターを特に意識もせず大量に倒していた。けれど、これらの由来は数千年前とはいえ他所の神様の名前なわけで、無礼千万とまではいかないけれど、これからは少しだけ畏敬の念を持って倒そうと心を改めた。ミイラもアンデッドとして回復魔法でダメージを喰らったりするけれど、どちらかといえば聖なる存在だし、刷り込まれたイメージって恐ろしいね。もっとも、そんなこと言ってたら北欧とかギリシャの神様の、一部業界での役回りなんて正視に耐えないけれど。
他にも、今回の古代エジプト展の目玉である全長37メートルにも及ぶ『死者の書』について、響きがカッコいいという理由で単語としては知っているだけで、それに何が書かれ、どういう風に使われていたのかすら、今回の展示に行くまで知らなかったなど、我が身の教養の無さ、文化的未熟さに関しては残念な限り。勉強って大事だね。
賢明なる読者諸氏におかれましては当然の知識でしょうけれど*1、現世で亡くなった人は幾多の試練が待ち受ける冥界の旅路を経て来世で復活する、という古代エジプトの死生観において、ざっくり言えば冥界のガイドブックとして死者が利用するのが『死者の書』らしい。最初はお墓の石室の壁に刻まれていたものが、次第に棺に書かれるようになり、やがてはパピルスに書かれた巻物としてミイラと一緒に埋葬されるように変遷していったそうだ。
個人的に面白いと思ったのは、輪廻転生するには死者自身が努力をしなければいけなくて、その為に生きてる間に全力で環境を整えようという現実的な対応。さらに、復活した後の世界でも毎日遊び呆けてていいわけではなくて、現世と同じように労働はしなければならないというシビアな考え方と、それでもやっぱり労働は回避したいから、自分に代わって労働してくれる人形を一緒に埋葬するというズル賢さも好きになった。平均的には1,2体なのに、700体も人形を埋葬してる人が居たらしくて、現世では『死者の書』を作成できる程に偉い地位に居たんだろうに、来世では同じように働きたくなかったんだろうなーと、3,000年という歴史の重厚さと、変わることのない人間臭さのギャップを楽しんだりした。
文化の成熟に合わせて様式を変えつつも、1,000年単位で同じ死生観が受け継がれていったというのは、現代に生きる自分からすれば驚く話なのだけれど、物事の進歩なんてそんなものなのかもしれない。2012年に生きる自分が来世というものを考えれば、脳味噌と記憶を電脳化してデジタルデータとしてバックアップしつつ、肉体はIPS細胞からクローンを作る方向に発想が向かってしまう。2,000年後はどうなってるやら。

ガイド音声

この展示を訪れたメインの目的は坂本真綾のガイド音声なので、最後にそっちのも軽く触れておく。展示の目玉である37メートルの『死者の書』(グリーンフィールド・パピルス)は、ネシタネベイトイシェルウという紀元前1,000年頃の女性の為に作られたもので、ジュニア版のガイド音声はそのイシュルウと、オシリスの息子であるホルス神の2役が案内してくれる作りになっていた。
イシュルウはかなり天真爛漫な少女のキャラ設定になっていて、『まずは内臓を取り出してー』とミイラの作り方を嬉しそうに教えてくれたり、『死者の書』の挿絵の自分の姿を『この黒髪の女性がわ・た・し』と自慢げに紹介したりとノリノリな一方で、ホルスは黒執事のシエルみたいな男の子ボイスで、何の意識もしてないとこれ別の人かな?と一瞬思ってしまう低音イケメンボイスのクールなキャラだった。真綾ファンなら演じ分けを楽しみながら回れるので、500円の価値は十分にあるはず。出口で機材を回収してくれるお姉さんと、楽しくお喋りできる場合も稀にある。*2

終わりに

この数年、文化的活動が専ら音楽に偏っていたので、久しぶりに訪れた美術系の展覧会はとても楽しいものだった。世界史の教科書で微かに聞き覚えのある単語や、頭の片隅に何となく残ってる知識を元に、普段あまり使わない部分の脳味噌をフル活用してアレコレ解釈したり、それを同行者と話し合ったりしつつ歩き回るのは頭と体の良い体操だね。折角いろいろな美術館が偏在している東京に住んでるので、もう少し積極的にこっち方面にも足を伸ばそうと思った古代エジプト展だった。関係者の皆様がより積極的に坂本真綾のガイド音声を作成してくれることを願いつつレポはお仕舞い。

*1:捨て身の喧嘩腰

*2:滅多に無いの意