20周年記念LIVE "FOLLOW ME"

何も書かないわけにもいかないとはいえ、既にライブから1ヶ月以上も経っているので、ライブ本編に関して、あの日の坂本真綾がどうだったかという読者の皆様が最も関心があるだろう内容に関しては書かないことにする。ナタリーを初めとしたメディアの記事とか、そのうちリリースされるだろうライブBDとかで確認すればいい話。ライブの数日後にtxtファイルに数行だけ書いたメモを元に、極めて個人的な感想を幾つか残すに留めようと思う。(8,640)

音と映像と

先日のラスマスwithフリーダ@ビルボードの感想でも書いたように、自分が見てる映像と聴いてる音、その2つの波が同じ方向から一緒にやってくるというのは結構な贅沢であると思う。この日、僕がライブを見ていたのはアリーナに伸びた中央の花道の上手側だったので、中盤のアコースティックパートや終盤の『風待ちジェット』では体の向きを90度以上変えなければ、花道の先端に居る坂本真綾を見ることはできなかった。
いざ向きを変えるとどうなったかと言えば、右耳はエンドステージに設置されてる巨大なスピーカーからの音を直接キャッチするのがメインなのに対して、左耳はステージ後方の空間に響いてる反響音もキャッチすることになった。これが何とも気持ち悪い! 右と左で聴こえてくるタイミングは微妙にズレるわ、左だけは異様にエコーが掛かってるわで、ずっと聴いてると文字通りに気分が悪くなりそうな音像だった。
更に言えば、特に面白い変化があるわけでもない坂本さんの後姿を見てるよりは、正面から撮ってくれてるモニターを見てる方が幸せになれると思い至り、花道パートでは向きを変えることなく殆ど正面を向いて過ごしていた。お陰で『パイロット』や『奇跡の海』の時にモニターで流れてた新しいムービーを見ることは出来たのだけれど、周囲の大多数の人は坂本真綾を直接に見ようとセンターステージの方を向いてたので、微妙に目線が交差して気まずい思いになったりした。
大きい会場じゃないと大勢が同時にライブに参加できないのは当たり前で、大きい会場になればなるほど音響が難しくなるのも当たり前。それなら何を期待して参加すれば、より楽しむことができるのか。大きい会場での経験値をもーちょい積みたいと思った要素だった。

パイロット』と『そのままでいいんだ』

恥ずかしいからリンクは張らないが、2009年のかぜよみツアーで歌われた『パイロット』に落胆した過去がある。その時は坂本真綾の声の変化が原因であると結論付け、その後ミツバチツアーでセトリ入りした時も特に騒がなかったんだけれど、今回のSSAでの『パイロット』はかなり感触が良くて、自分でもその事に少しばかり驚いた。原曲寄りもさらにテンポを落としたアレンジも良かったけれど、今の坂本真綾の声で歌われる『パイロット』の良さを理解できた気がした。
今回のセトリの中で、同じ考え方で捉えたもう1つの曲が『そのままでいいんだ』になる。この曲のCD音源は良い意味で飾り気の乏しい長音が特徴だと思っていて、しゃくり上げたりビブラートを強く効かせたりしないからこそ、瑞々しい16歳坂本真綾の声が味わえる名曲である。そこから20年経った坂本真綾が歌う『そのままでいいんだ』は、作詞を手がけたロビンちゃんのピアノによる、2人だけの世界を作り上げているのにも感慨ひとしおだけれど、35の坂本真綾じゃないと出来ない歌い方が随所にあって、脳内で流れるCD音源との比較を楽しみながら聴くことができたという点で、この日のセットリストの中でのマイベストになっている。

大迷惑

タナソニでメロスばりに激怒したけれど、今回の菅野さんのピアノソロでも『バイク』の時にクラップを頑張ってた愚民が少なからず居た。光と違って音はゆっくりなので、あれだけ広い空間でクラップをしたら確実にズレが発生するし、そもそもあのBPMの曲に合わせてテンポ乱さず叩き続けられるスキル持ちがどれだけ居るんだよ、という理論武装をしかけて、ふと立ち止まった。果たして己は他人様を声を大にしてdisる資格を持ってるのか。どういう行動を取ればdisられて然るべきか。
終演後に変なネタpostが4桁RTされてたように、一般的な?声優ライブと比べると坂本真綾のライブのお客さんは物静かな人が多い。基本的には奇声をあげる人もいないし奇行に走る人もいない。けれども、色々な人が集まれば、周囲全てのお客がその人の望ましいふるまいをするはずもなく、そういう部分で不満を持つ僕みたいな人は一定数出る。その不満の大きさもケースバイケースだけれど、あるラインを超えると2chやらtwitterやらに投下される。
1個目のトピックからも関連してくるのだけれど、センターステージに坂本真綾が居るのにエンドステージを向いてる僕をdisるコメントには遭遇しなかった。僕の周囲に居た人の懐が広かったのか、たまたま観測範囲から漏れていたのかは知らないが、"花道に居る坂本真綾をみんな見てるのに、1人だけ変な方向を見てる客が居て、気分が削がれて凄く迷惑だった"って思う人が仮にいたとしたら、僕はどのように反応するだろうと考えた。この喩えが極端ならば、"『風待ちジェット』でみんな手の振りをしてるのに、頑なに腕組みしてる奴がいて気分が削がれた"というケースでもいい。自分はどっちにしろ当て嵌まる。
何かをすることによって他人に迷惑を掛けることもあれば、何もしないことによって他人に迷惑を掛けることもある。恐らく、2つの行為にこっちは良くてこっちは悪いと明確に線を引くことは不可能だ。何かをして迷惑を掛ける方が、何もしないで迷惑を掛けるよりも、物理的な理由からより多くの人に迷惑として認識されやすい可能性はあるが、どれくらい迷惑に感じるかの個人差もあるし、その和を取って比較することもやはり不可能だ。
てなことをボンヤリと考えた結果、拍手に関してというか、他人のすることについてdis調のコメントは吐かないことにした。殴られたくないから殴らない。こうしてアウトプットすることが減っていく、或いは洗練されていくんだろうさ。

その他雑感

終演後に呟いた該当postをtwilogに纏めて、リンクを張って済まそうかと思ったけれど、他人との会話に含まれる部分もあるので、適当に短い文章にする。
色々なメディアにライブレポが掲載された中で、殆どの記事が言及していたのが"後悔の無い20年"というフレーズだった。それだけの時を過ごしてきた上で後悔が無いのかーとインパクトのある1文なのだけれど、20年という歳月よりは、今この瞬間に生きている自分自身に対する自己肯定の強さから来るものだと思った。それはそれで凄いのだけれどね。
菅野さんのピアノソロ終盤で『約束はいらない』をお客さんに歌わせる一幕があったけれど、ボディランゲージで歌詞を伝える菅野さんのセンスが凄かった。あらかじめ考えておいたかどうかは知る由もないけれど、即興でアレが出来るのならば、彼女は言葉がなくてもあらゆる人間とコミュニケーションを取れるに違いない。
15周年のGiftと20周年のFOLLOW MEで音楽的な違いがありそうと思って調べてみたら、割と顕著だったのがセットリストを構成する楽曲のテンポだった。CD音源から計算してるのと、曲によっては倍で数えるべきという説もあるから多少のズレは出てくるだろうけれど、リンク先の画像のように平均して20近くの差があった。タイアップのあるシングル曲の比率とも相関があるのだろうね。25周年ライブはどんなセトリになるやらだ。
https://gyazo.com/d0bf995ac7cf77269af763e43df7e7ed

終わりに

ということで、散々放置した挙句に2時間で書き殴った感想とも呼べない感想はここまで。歌がどうだったとか1文字も書かなかったな。20周年の幕開けとしては申し分ないイベントだったし、今後も追い掛けられる範囲で追い掛けていきたい。お疲れ様でした。