FCイベント2010 「from everywhere.」

前置き

18日の夜の回と、19日の夜の回に参加してきたのでレポ。当然、大阪組は見ないことをお勧めします。とか書いてたけれど、いつの間にか大阪の最終日当日になってた。
18日は諸事情で開始30分くらいを見てないのと、各回の違いをどうこう言える程でもないので、シンプルに行きます。でも長文です。キモイです。耐性ある人だけどうぞ。
前後にあったtwitterのオフ話は無しで。

いつもの諸情報

会場の赤坂ACTシアターは初利用。駅から近いし、周囲の飲食系店舗も充実してるし、椅子も座り心地悪くないし、去年・一昨年のzepp tokyoと比較すれば圧倒的に好印象。18日が2Fの2列目、19日が1Fの5列目だったけれど音響もさして悪いとは思わなかったです。強いて言うなら、パーカスのバスドラム的ポジションの楽器が強かったくらい。

客層は人によっては男女比3:7って言ったり、4:6って言ったりしてるけれど、よくわからない。終演後に溜まってるグループを見るとかなり男性が多いけれど、ひっそりと友達一人だけ誘って来て、さっさと帰ってる女性ファンも多そう。

舞台上の構成は、ボーカルをセンターに上手から半円を描くようにギター(18日嘉多山、19日古澤)、チェロ(笠原)、パーカス(中北)、キーボード(宇戸)のいつものCucumbers。ロゴやTシャツも完成したし、今後も固定化しちゃうのかしら。音数も多すぎず少なすぎずで丁度いいと思うけれども。

本編

本編はアンコールも含めるとトータルで1時間50分だったけれど、曲とMCと朗読とが全て綺麗に絡まりあって、2時間で1つの作品に仕上がっていたと言っても差し支えないくらい。
イベントのタイトル『from everywhere.』が指し示すとおり、今回のFCイベントは『もうすぐ発売予定』という不可思議な枕詞の付いたエッセイ集『from everywhere』と最大限にリンクしてた。37日間に及ぶヨーロッパ一人旅を2時間に凝縮したとも言えるかも。

一般的なライブイベントなら唄いたい曲があり、それらを流れが生まれるように並び替えるのだろうけれど、今回は先ず坂本真綾の37日間の海外旅行という明確なストーリーがあって、それを膨らませる過程で坂本真綾の楽曲を上手く落とし込んだor当て嵌めたという印象。持ち歌の多さゆえに為せる技かも。

ということで、セトリ順に頭からイベントを追っていくのが楽なので、そういうスタイルのレポートにします。一部、順番が怪しいところは他人様のレポをカンニング。レポート中、曲のタイトルは『この色』で、歌詞は「この色」で表示してます。
あと、イベント開始直前にtwitterの方で呟いたセトリ予想があるので、それも掲載

セトリ予想というか願望。DT、優しさ、ポケ空、青い瞳、光の中へ、えびうぇあ、ピーナッツ、マジック、虹、失恋 #maaya_ids
posted at 17:49:19


【00:オープニングムービー】

以前、会報で記事になってた福島を訪れた際に作った起き上がりこぼしの『笑子(エコ)』をモチーフにした短い動画。
よく映画の冒頭で、制作会社や出版社のショートムービーが入るけれど、それを意識したものだそうな。シンプルでシュールな所は確かに似ていた。

【01: vento】

WE ARE KAZEYOMI 以降すっかり入場曲になってしまった感が。かぜよみ冒頭でも素晴らしい仕事をしてるし、メロディーの静けさや美しさの中にも、これから何かが始まるって高揚感が含まれててピッタリなのだけれどね。
でも、生エスペラントの歌を聴いてみたいです。ギターじゃなくて、こっち練習してみましょうよ。武器が増えますよ。

【02:おきてがみ】

実質の1曲目。背後のスクリーンにエッセイ集『from everywhere』の冒頭の文章が表示されるのに前後してだったはず。
実は18日は遅刻したせいで、最初の3曲くらいは聴けてなかったり。そのまま19日の夜の回まで情報を封鎖してたので、イントロのあのピアノ音を聴いたときは相当驚いた。冒頭はマジックナンバーのようなアップテンポな曲で盛り上げてくるだろうと思ってたから。それに少年アリスのアルバム最後の曲というイメージが強かったので、1曲目に歌うのがこれかーと心の中で唸った。


イベント終了後に振り返った時に、確かに旅にでるその前に『おきてがみ』を記すことは筋が通ってるなと感心したのだけれど、やはり違和感があったので更に考えてみたらシックリくる答えが見つかった。もうイベントの内容に一切関係なくなるけれど書いてみる。


『おきてがみ』は旅立ちの歌というより別れの歌である。率直に言えば、行き先は全然見えてないけれど、菅野よう子プロデュースの環境から離れることを決意した坂本真綾自身がテーマになってると自分は思ってる。向かう先に関する歌詞が一切無いこととか、いくつか根拠はあるけれど、これを信じたいというのは宗教レベルでなんで、放っておいて貰えると一番助かる。本人に全否定されたらファンを辞めかねない。


で、実際にはトライアングラー『美しい人』『0331medley』などで菅野よう子と再会しているけれど、『おきてがみ』の段階ではその事を意識しては無かったと思う。つまり、『おきてがみ』の主人公が経験するのは、どっかに出かけて何かしてまた帰ってくる旅ではなくて、新しい舞台を求める片道切符の旅だったはずだ。
自分が違和感を覚えたのは多分この点に由来する。


後半のMCでも触れるように、今回の37日間の一人旅は、日常に忙殺され、当たり前の感情やそこから生まれる行動を押し殺したりする、そんな自分から離れる為のリセットの旅だったと真綾は言葉にしている。それは37日間と長くはあるけれど、片道切符ではなくて戻ってくることを前提とした旅のはずだ。これは『おきてがみ』とは根本的に質が異なる。


今回の一人旅の動機になった想いのみを歌詞にした曲があれば、恐らくそれを歌ったかもしれない。でも、そんな曲は無いわけだ。(旅の動機に関してはマジックナンバーで歌っているけれど、あれは1曲の中で完結してしまっている。)

『おきてがみ』はピアノのみでシンプルな割に何となく歌うには不向きな楽曲だし、ある程度意味づけも通ってるこの機に歌おうということで選ばれたのかなと思った。

以上、全部俺の妄想。あー、キモイキモイ。

歌声はとても綺麗でした。最後の「さんばんちー」の「ちー」がなんとなく可愛かった。

【03:セツナ】

で、『おきてがみ』とは曲調も歌詞も対照的なこの曲を持ってくるのは、お見事と言う他ない。歌詞に直接的に旅という文字は無いけれど、「地図」とか「確かめに行く」とか「先を見に行く」とか「すり切れた僕らの靴」とか、これでもかとイメージを膨らませる単語が踊ってる。
08年のグローブ座での『地図と手紙と恋のうた』で1度は歌ってるので消去法だと辿りつき難いけれど、コンセプトを思い描ければ割と予想できたのかも。気分的にウキウキしたのは覚えてるけれど、その他のことを全部忘れてる

【04:MC1】

いつもの参加者チェックとか、OPロゴの話とか、今回のエッセイ集は日記形式と手紙形式の2つで構成されてるとか、最初のパリは順調だったけれど次のプラハで落ち込んだ?話とか。

【05:朗読1】

プラハ修道院にある図書室でのエピソードを日記形式で綴った箇所の朗読。美声に聞惚れる。殆ど噛まなかったのも良し。細かい内容に関しては他の人のレポや、発売されるエッセイを読んで貰えれば済むと思うのでここでは省略。
自分も小さいころは本に囲まれた空間(図書室or書斎)で、まだ読んだことない本に憧憬を抱いてたりした記憶がうっすらあるけれど、成長して本屋という俗世の場所に触れるうちに、いつの間にか恐怖というか、『そこまでして書き残したい衝動が本当あるのか、お前ら(著者)には?』という歪んだ感情を育んでしまったので、もう僕には戻れない世界。悲しくてやりきれない

【06:My Favorite Books】

実は18日はこの曲の最中に場内に踏み入れたので、また意外な選曲だなーと思ってた。前の朗読とセットで捉えないと分からないよね。夕凪LOOPの新曲は不遇な扱いを受けてるものが多いので、5年ぶりに聴けて嬉しかった。
上で書いたように、本に対して悲しいバイアスが掛かってる現状なので、絵本ていうノスタルジーを伴う単語使ってるのが今更にありがたい。そして作詞が本人じゃないことに気づいた。


【07:MC2】

プラハから初めての夜行電車でヴェネチアへ。女性専用部屋を取ったはずが、オジサンばっかだった件。ヴェネチアでは道に迷ってたらシーザー君が助けてくれたけれど、吊り橋理論なんて無かった!(←多分あった
東京に戻ってきて自分も外国人の観光者に優しくなろうと決意→実践。真綾『め、めいあいへるぴゅー?』外国人さん『あ、大丈夫です。』
デビュー作のエスカフローネの中に、そんなヴェネチアっぽい曲があるので10年ぶりに。

【08:青い瞳】

予想という名の願望が的中してかなり嬉しかった。ヴェネチアうんたら関係なく、去年DIVE系が多かったからそれを外して、グレフルから長らく聴いてなくて、聴きたいのを選んでただけなのだけれどね。キーボードの宇戸さんがアコーディオンに持ち替え、ステージ上青と背面の緑のゆらゆらした照明で、水の都ヴェネチアの雰囲気を作り上げてた。
個人的には今回のセトリでベストの1曲。CDから15年近い月日が経ってるけれど、真綾の声の変化と歌の上達を同時に楽しめた感じ。この感覚は珍しい。「出会いそして別れ」の「れ」とか「何もかも忘れて」の「て」が、躊躇い無くぴたっと音が嵌って聴いてて凄く心地よかったです。至福やね。

【09:MC2】

小さい頃にテレビで映像を見て以来憧れてたけれど、直行便が無かったりお仕事にも絡まなかったりで行けなかったリスボンをついに訪れる。この旅の一番の目的だった都市で1週間も滞在、うち3日はスタッフ合流。10年度のカレンダー背景。魔女宅のロケ地。

【10:優しさに包まれたなら】

真綾撮影リスボン写真の映像とともに。新曲からもやると期待してたら応えてくれました。最初ラジオで聴いた時はキーが高すぎるんじゃね?と思ったけれど、たまゆらOPの映像とかで何度か見てるうち慣れてきた。

【11:MC2】

おはがき紹介コーナー。ここは初回と翌日で少し内容が変わってた。
「はがき出した人ー?」の呼びかけに対する挙手の少なさに憤慨真綾。突き詰めるとこれは一つの芸になるかも。年末のブツにも収録されるそうですが、お茶を濁してる感じも否めない。まぁ、それはそれでいいけれど。

【12:朗読2】

エッセイ集の中から、ローマ郊外の宿KOTOBUKIに泊まって、『everywhere』を作曲した時のエピソードの朗読。ここは手紙形式だった。細かい内容はここも省略。
朗読の後半から宇戸さんのキーボードでイントロのフレーズが繰り返される。歌詞の冒頭部分の朗読まで始まったので、まさかとは思ったけれど、まさかで済んだ。

【13:everywhere】

改めての『everywhere』。武道館のMCではこの曲に込めた思いを、綺麗に言葉にするのはまだ難しいと言っていたけれど、今回のイベントで伝えることが出来たんじゃないかと言ってたので、言葉や歌詞から自分なりの解釈・感想を。


自分で自分の命を喜ばせたい、という坂本真綾の30代の目標から見えるのは、生の賛歌であり、その裏にあったのは、生を強く想起させるものとして真逆の要素である『死』なのだと思う。『everywhere』坂本真綾の死生観をテーマの1つとした歌だというのが、今の自分の考え。もう1つのテーマは当然、今回の一人旅。


「ぼくが今向かう場所は〜」から「1光年の手前」までのフレーズが指し示すのは『死』なんじゃなかろうか。KOTOBUKIでのタロウさんや、学生時代の友人に仕事仲間、30まで生きてれば色々な別れを経験する。「向かう」からって死にたがってるわけじゃないし、「遠くじゃない」からって余命僅かという訳ではない。生ある万物にはいつか訪れるし、自分には無関係の遠い世界の話ではないと、少し客観的な立場から『死』を見つめてるフレーズに思えた。


上の前提に立つと「寂しそうに〜」の段落は技巧的な作詞だなーと思う。誰かの死を、生きている人が抱く悲しさ一辺倒で語らずに、死んだ人からの目線でも形容しているのがまず1点。(ここらは『Hello』の歌詞にも似ている)
さらに「終わりじゃない僕の旅」というフレーズで、人生を旅に見立てて、旅を終えた人とこれからも続ける人との離別で表現しながらも、今回の一人旅のイメージも同時に含ませてサビへの流れを作ってる。


そしてサビ。この段落では『死』に関しては控えめにして、一人旅の動機と辿りついた答えについて。
旅に出たのは「帰る場所」を見つけるため。これは同時に「ふるさと」とも表現されている。2つの単語が生み出すイメージは、昔の自分が居た場所に戻りたいという欲求なのだけれど、それは『おきてがみ』の歌詞でいう「ふたつとないこの町」では無いはず。

『お腹が空いた時に食べ、眠い時に寝て、晴れてる時は散歩して、雨が降ったら雨宿りする。楽しい時に笑って、泣きたい時に泣く』(武道館のMCから抜粋)

【02:おきてがみ】のとこでも書いたような、感情と行動にズレがないそんな当たり前の事を、普通にできる自分、あるいは精神状態を指して、「帰る場所」と表現してるのだと思う。


ついでに曲のタイトルにもなってる「everywhere」についても。
「帰る場所」「すぐそばにあった」というのは、自分自身の中じゃなかろうか。だから「everywhere」であり、自分がどこに行ったとしても、当たり前にその場所に在る。スイーツの自分探しぽいと言われれば、あんま否定できない。
ただ、『everywhere』が優れてると自分が感じるのは、サビで2つのテーマが綺麗に融合してる所。生きてる人の使命として「愛される」ことを掲げ、その担い手は他の誰でもなく先ず自分であるべきって結論は、死生観と旅の動機の2つのテーマの答えとして成り立ってるはず。動機の方に関しては言葉足らずの感も否めないけれど、結論は坂本真綾ってことですよ。
以上、全部俺の妄想。あー、キモイキモイキモイ


【14:MC3】

旅行から帰ってきて直後の製作。マジックナンバーの歌詞は、一見前向きで明るいが、泥臭い自分と、「こばと。」を刷り合わせた産物。聴いてると泣きそうになる。
次でラストですの後のお約束『えー』の少なさに少しおかんむり真綾。乙女心は難しい。

【15:マジックナンバー

直近シングルからも1,2曲はやるだろうと思ってたら案の定。2月のプレミアムイベントで演奏されなかったのが、そもそも変な話だよねw

北川さんのキャッチーなメロディと、タイアップの印象が強くてあまり意識してなかったけれど、改めて歌詞を読んでみると『everywhere』と連作と言っても差し支えない気がする。冒頭の「どうすれば〜」の段落は一人旅の動機まんまだし。

音に関しては3連符のとこを1拍目で強めに叩いて残りを省略するパーカスが何故か記憶に残ってる。バンド構成上、中北さんはビート主体だったので、武道館の三沢さんと対照的で面白かった。見た目もパワフルだしね。
あと、ラスラビ前の静かな部分くらい、愚民のクラップを綺麗に止めようぜ。会場の構造からかクラップが鞭の音みたいに強く反響して、個人的にイケてなかった。
終わり際、ステージ後方からの5色の照明が虹っぽくて、CLAMP作品っぽさを醸し出してた。


【16:アンコール&『DOWN TOWN』のPV上映】

かけ声がない代わりにずっと同じテンポの拍手。なんか珍しかった。
DTのPV。恥ずかしいからと言って真綾は引っ込む。ビッグバンド曲をアコースティック編成にアレンジしなおすのは骨だったかしら。オリジナルの雰囲気でやれば出来るんだろうけれど、カバーの意義が薄まっちゃうしね。
PVの方は何回か見てたのだけれど、まぁノーコメントで…非実在谷間に突っ込む命知らずは流石に居なかった。曲は回数聴いてるうちに好きになってきた。オリジナルを知らなかったというのもあるかも。

【17:ループ 〜sunset side】

これも旅に合う曲というMCを受けて。オレンジの照明で夕暮れを演出しつつ、間奏は何故か月夜みたいなスポットライトだった。
声と楽器の調和が良いから、CDよりスンナリ曲に入り込めた。CDは雰囲気作ろうって意図を露骨に感じてしまったので。全体的に綺麗な歌詞なだけに、最後の「くるるまわる」の部分がかわいいアクセントになって良いよね。

【18:Get No Ssatisfaction!】

ある意味でIDSのテーマソングみたいなものだからか、アコースティック編成にもかかわらず2年連続のお出まし。
18日の回だと1コーラス目のBメロから何か怪しいなーと思ったら、サビで歌詞が完全崩壊。それでも澄ました顔でそれっぽい歌詞を発するのは、ある意味で職人芸の域。間奏の間に慌てて傍らの譜面台をめくってたので、カンペを参照してたんでしょう。ニヨニヨしながら見てました。真綾かわいいよ真綾。

【19:ポケットを空にして】

お約束のもたらす安心感。旗振りがチラホラいたかしら。この曲も旅がテーマだよね。自分には戻るべき日常の旅が欠如してますが。セトリ予想はDTを0.5換算で5.5曲正解でした。頑張った方じゃなかろうか。

まとめ

いつもの妄想トークに加えて、慣れない歌詞解釈なんてやったせいで、いつも以上に気持ち悪いレポートに仕上がりました。満足です。5年後くらいに自分で読み返して、うわあああああってなれればいいんだ…
来月の新曲に加えて、エッセイ集の発売や、ライブの予定も水面下で動いてるみたいだし、レコーディングも進んでるぽいので、残り半年になった15周年記念を楽しみたいと思います。参加した人、ここまで読んだ人、お疲れ様でした。