とーかみ秋の読書祭り

ここのところ、定期的に電車に乗る時間があるので、5年ほど遠ざかっていた読書でも始めてみようかと思い、適当に選んだり、twitterでお薦めしてもらったのを、図書館で借りて読んでるので軽くメモとか感想。

蠅の王 (新潮文庫)

蠅の王 (新潮文庫)

1冊目はゴールディングの『蠅の王』。無限のリヴァイアスの元ネタの1つだというのは知っていて、前から読んでみたかった一冊。内容を一文で説明すると、「第三次世界大戦が勃発してるという仮想の世界において、疎開のために乗っていた飛行機が墜落し、大人が一人も居ない無人島に漂流したイギリス人の少年達があれやこれや『頑張ってしまう』お話」
翻訳されてる文章にありがちの、物語の難解さとは無関係の読みづらさや、風景描写から映像を思い描く難しさは、やっぱり好きではない。自分がちゃんと味わえるのは、日本人による日本語の文章だけに思えてしまう。あと、事前に想定していたよりも登場人物の少年の年齢が低くて(年長格の主役ですら多分10才前後)、子供特有の稚気溢れる行動はノスタルジーを覚えることはあれど共感はできないし、明確な目的を持ったグループ間での権力争いとかも起きないから、リヴァイアスっぽさを求めて読むものでは無いと思う。
銀河不動産の超越 (講談社ノベルス)

銀河不動産の超越 (講談社ノベルス)

2冊目は森博嗣の『銀河不動産の超越』。大学時代にSMやVやキルドレシリーズを読み漁ったけど、シリーズものは色々な理由で追いきれなくなったので短編を借りてみた。『蠅の王』の直後だったので、何とも読みやすいなーと思いながら、さらっと読破。ある意味でライトノベルみたいなもんかも。表紙が女の子だらけのラノベはもう違う呼称を付けるべきだと思う。倦怠系の主人公と思わせておいて、至って真っ当な人間だった、このどことなく裏切られた感のせいで個人的には評価しづらい。
黒祠の島 (ノン・ノベル)

黒祠の島 (ノン・ノベル)

3冊目は小野不由美の『黒祠の島』。twitterで薦めて頂いた中の1冊。旧習に囚われた九州の島で、急襲された女性の死因を明らかにすべく、敵対する島民を徐々に味方へと吸収して解決するお話。意味も無く駄洒落にした挙句に自分の首を絞めてしまった。中盤まではかなり入り込めたのだけれど、犯人は誰なんだろうとなった段階で話のテンポががたっと悪くなってしまったのが残念。名前だけの登場人物がかなり多く、短期で一気に読んだけれど割と把握が大変だった。まず寓話的なエピソードがあり、それが実際の事件に落とし込まれているという手法は京極さんとかと同じ匂いを感じがして好み。
異邦の騎士

異邦の騎士

最後は島田荘司の『異邦の騎士』。ミステリーの大家として名前だけは知ってたけれど、今回が初めての邂逅で、表現や内容や全体の構成がかなり肌に合った。予断無しに読んでもらいたいので内容への言及は省略するけど、実質の処女作であり、ある意味では私小説であるという著者のあとがきを読んで、作品への愛着が増した。自分が慣れ親しんでるある種のサウンドノベルと親和性が高いかもしれない。最後の糸の表現はやや唐突だけれど、爽やかな読了感を産み出していて、してやられた感。引き続き、他の作品も読んでみたい。