プラチナ・ジャズ・オーケストラ presented by ラスマス・フェイバー@ビルボードライブ東京

ハウスDJとして活躍する一方で、日本のアニソンにも造詣が深く、過去に3作のアニソンジャズアルバムをリリースしてるラスマス・フェイバーの、最新アルバムを引っさげての日本公演があったので遊びに行ってきました。最近、飛び犬所属のアーティストとの仕事が増えてたので、それが直接のきっかけですがね。8日の2ndと9日の2ndと何故か両日とも参加したので軽くレポ。(4800&6800+α)

いつもの

冒頭にもちょろっと書いたとおり、昨年末の『Dits』で真綾とラスマスが仕事をしたのが、ライブ参加の直接の切っ掛けになった。サプライズがあるよ、というラスマスのpostは9日のまめぐゲストのことだったようだけれど、32歳さんの参加は無くても楽しめた2日間だった。
会場のビルボードライブ東京は今回が初利用。去年参加した富田ラボのライブがあった青山のブルーノート東京と似た外タレ御用達レストラン付きライブハウスで、六本木ミッドタウンの商業ビルの4Fに入り口がある。都会的かつ現代的な内装やデザインはブルーノートと違う趣きだけれど、ステージまでの近さや、1晩2stage制、お料理の値段等はとても似てる。この会場に足を踏み入れてみたいというのも参加の一因ではあったし、初日は5Fのカジュアルシートで、翌日は3Fの自由席でという風に異なる座席を予約したのも、会場を隅から隅まで味わいたいからだった。
通常時のビルボード東京の客層は知らないけれど、この2日間は若い人が多かったように思う。9日は明らかにまめぐ目当てだなという人も居たけれど、どちらの日も音楽サークルに所属してる風のグループ参加者が目立った。カジュアルシートはワンドリンクが付いて4,800円と値段もリーズナブルだし、これからも面白そうな演目があったら足を運んでもいいなーと思わせる会場だった。
ステージはかなり小さくて、プラチナ・ジャズ・オーケストラの面々がそれぞれのポジションに陣取ったら表面積の7割は埋まってた。楽器構成は大雑把に書くと、下手からグランドピアノ、キーボード、トランペット、トロンボーン、キーボード、サックス3本、ベース、ドラムという並び。手前と奥に分かれてたり、曲によって構成は異なったりしたけれど大体はこんなで、キーボードとサックスの間がステージ中央となりボーカル用スペースがあった。
ナタリーをはじめとした幾つかのサイトで記事になっているお陰で、9日の2ndステージはセトリが書けるのでとりあえず貼り付けておく。8日はこれからまめぐの曲を除いて、代わりに『God Only Knows』とか数曲が入ってた。

01. Waganawa Shougakusei / わが名は小学生[「みつどもえ増量中!」より]
02. Chiisana Tenohira / 小さなてのひら[「CLANNAD〜AFTER STORY〜」より]
03. Hajimete no Chuu(My First Kiss)feat. Niklas Gabrielsson / はじめてのチュウ[「キテレツ大百科」より]
04. Stolen Moments feat. Niklas Gabrielsson / ルパン三世・愛のテーマ[「ルパン三世(TV第2シリーズ)」より]
05. Enchanting Creamy / デリケートに好きして[「魔法の天使クリィミーマミ」より]
06. Sobakasu(Freckles)/ そばかす[「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」より]
07. Gravity feat. Emily McEwan[「WOLF'S RAIN」より]
08. Genesis of Aquarion feat. Emily McEwan[「創聖のアクエリオン」より]
09. GO! GO! MANIAC[「けいおん!!」より]
10. TRY UNITE! feat. 中島愛[「輪廻のラグランジェ」より]
11. Seikan Hikou feat. 中島愛 / 星間飛行[「マクロスFrontier」より]
12. Nausicaa of the valley of the wind feat. Emily McEwan / 風の谷のナウシカ[「風の谷のナウシカ」より)]
13. The Galaxy Express 999 feat. Niklas Gabrielsson / 銀河鉄道999[劇場版「銀河鉄道999」より]

<アンコール>
14. Aimo -Tori no Hito- feat. 中島愛 / アイモ〜鳥のひと[「マクロスFrontier」より]
15. Fly Me to the Moon feat. Niklas Gabrielsson & Emily McEwan
16. 1/2[「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」より]

ということで、日付ごとにその日に思ったことなんかをツラツラと書き残そうと思う。

8日2ndステージ

この日は5Fのカジュアルシート中央付近から全体を見下ろす感じで鑑賞。ステージがある3Fの客席はブルーノート東京よりも座席間にゆとりがあって開放的な雰囲気。ステージの後ろがガラス張りの窓になっていて、ミッドタウンの夜景が見えるのは確かにお洒落だった。開演直前にはカーテンも下がって、ステージが見づらいってこともないしね。角度的に演者とは視線が合わず、表情も見づらいけれど、十分に近くて見やすかった。
曲によってメンバーのステージ出入りや、演奏する楽器の変更が多かった。そもそもラスマスさんはライブの冒頭には居なかったしね。ナタリー等のレポートに掲載されている写真を見てもらえば分かるように、フォーマルでバッチリ決めたおっさんの集団はひたすらカッコよかった。サックスの3人はかなりベテランの風格が漂ってて、その他の人たちより一回り二回りご年配だったかも。
ボーカルは男性のNiklas Gabrielssonと女性のEmily McEwanの2名が何度かチェンジしながら。Niklasはとても立ち居振る舞いが洒落ていた。日本人でスーツを着てあの雰囲気を醸し出せる人って殆ど居ない気がする。強いてイメージで言うなら若い頃の植木等とかかな。若しくは滑らないルー大柴。アンコールで最前の客席の机に乗るのはやりすぎだと思ったけれど、悪ふざけしてても憎めない感じなんだよね。『fly me to the moon』の「hold my hands」で客席最前の女性の手を取ったり、「I love you」のyouに合わせてお客さんみんなを指し示すポーズだったり、曲終わりの締めのバレーボールのスマッシュみたいな腕の振り下ろしだったり、あらゆる動作が今までに見たどの人とも違ってて新鮮だった。
Emilyは真綾の『gravity』も歌ったのだけれど、やっぱりジャズはジャズシンガーじゃないと歌えないよなーと当たり前の事を痛感させられた。あのリズムのずらし方は真似したり、学ぶものじゃなくて内から出てくるものなんだろね。そしてボーカルは2人とも声量が豊かだったように思う。
インスト曲で一番良いと思ったのは『そばかす』。ラスサビ前の溜めで生まれた一瞬の静寂を破って、酒場で浮かれてるようなノリの軽快なピアノソロが痺れる程にカッコよかった。この日のみの演奏だった『God Only Knows』のフルサイズ再現も素晴らしかったし、CDには収録されてなくてライブ限定だったぽい『GO! GO! MANIAC』も原曲の素っ頓狂さが無くなって、最高にご機嫌でイカシタ感じだった。開演前に同行者に「jazzなんてどうのればいいか分からない」とか言ってたのだけれど、終始ごきげんに揺れていた気がする。これが管5本の底力なのだろう。

9日2ndステージ

まめぐこと中島愛がこの日に限ってスペシャルゲストで参加するというので、ステージ目前の席を確保可能な整理番号をちょっと奮闘して入手した。前日に全体の構成は抑えてたので、演者の表情とか、手元とか、上から見下ろしてるんじゃ分かりにくいところに気を払いながら見ようと思ってた。
まず、見てて面白いなーと思ったのがジャズならではのセッション感。例えばピアノとキーボードの人だったり、ベースとドラムの人だったりが、ある時は顔を伏せて耳に全身系を集中させながら繊細なタッチで音を付け足し、ある時は相手の動きを注視して同じタイミングで鳴らして、その場でしか生まれ得ない音楽を作ろうとしてる雰囲気が感じられた。クラップじゃなくて、指ならしでリズムを取る人が多いのも新鮮だったし、各人のソロパートはステージ上の他のメンバーもお客さんみたいに真摯に聴いてたりするのも良いなーと思った。
次に気づいたのは、同じ管楽器でもトランペット・トロンボーンと、サックスとではこうも音が違うのかという、ある意味でとても当たり前のこと。座席的にサックスのが遠かったのもあるけれど、直線的に単音単音がキッチリ飛び込んでくるトランペットやトロンボーンと、流れるように滑らかに音が上下に滑るサックスでは曲の中で担当する部分も全然違うし、魅力的に聴こえる部分も異なった。両者の魅力をきっちり組み合わせるのがアレンジャーには求められるんだろう。曲紹介の時の英語のMCをぼんやり聞く感じだと、編曲はラスマスだけでなく、何人ものバンドメンバーが担当してるらしい。ちなみに、サックスのおじ様達は他にもフルートやクラリネット?も吹いてた。あれが年の功か。
ベースの人は常にフル稼働で大変そう。ドラムの人はマラカスを使って複雑なリズムを正確に刻んでたり、『そばかす』の締めでメンバー全員相手にタイミング狂わせて遊んだり、『GO! GO! MANIAC』で終わりそうで終わらないドラムソロをやってたのが印象的。主役のはずのラスマスさんは、全体のサポートとまでいうと大げさだけれど、プロデューサーのポジションで控えめにしてた。シェイカー持ってステージ奥の方に行ったりもしてたし、セッションを楽しんでるという表現が一番ぴったりか。
ということで、この日のスペシャルであるまめぐゲストコーナー。ラスマスのMCに応えて登場したまめぐの衣装は膝丈で黒のボリュームがあるスカートに、色とりどりのボタンを全面にあしらったチューブトップぽいインナーに、軽く羽織る感じの黒の上着という、基本的にはシックなんだけれど年や立場相応の派手さも兼ね備えた衣装で、僕は割と好きな感じ。1曲目はイントロが結構長かったのだけれど、まめぐがマイクを弄るにつれて、コードがスカートの裾に引っ掛かったりして視線誘導が恐ろしかった。かなり高いヒールを履いていたけれど、外国人の男性ばかりのステージに立つとそれでも小柄で華奢に見える。
さっきも書いたように座席がラッパから近かったので、生音ではなくてPAを通して聴こえてくるボーカルやピアノは音量の面で少し辛かった。ただ、意識して歌声に耳を払ってる限りだと、割といい感じに音程を保ってたように思う。『TRY UNITE!』はRasmeguとも違って、原曲よりはサッパリとした歌声にジャズの軽やかな雰囲気を纏ったアレンジだった。一方で『星間飛行』は原曲から節回しがジャズ風に変更され、テンポも少し早めになって、今回の会場ならではというスペシャル感がたっぷりだった。あと、「まるっ」や「キラッ」を省略してたのは正しい判断だったと思う。
さらに、アンコールでは2ndステージ目のみ『アイモ』をトリオ+ラッパ2本の静かなアレンジで披露してくれた。マクロスFのコンサートがあった頃はver違いが多かったのもあって聞き飽きるくらいだったのだけれど、明るく転調するCメロ以降もきっちりやってくれて懐かしさが蘇った。マクロスパシフィコ横浜のライブが、今の自分のライブ三昧の切っ掛けだったりするしね。ということで3曲でまめぐのゲストパートはお終い。ラグランジュ2期もラスマスプロデュースだし、これからも良い関係が続いていくといいね。
『アイモ』後はみんな大好き『fly me to the moon』と『1/2』のマンボアレンジでフィナーレ。終演後はメンバー全員からサインを貰える物販会とか色々あったけれどここらは割愛。

ということで、ザックリと2日間の感想めいた物を書いてみた。一言でまとめると、とても洗練された上質のエンターテインメントを味わえた貴重な機会だったという感じだろうか。元曲の8割くらいは知っていて世代的にもドンピシャの曲が多かったので、あまり気負わずにジャズというものを楽しめたのが何よりも良かった。今度はラスマスさんのハウス方面にも手を出してみようかな。いつか『旅の途中』のジャズアレンジも生で聴きたいっていうのと、清浦さんにも楽曲提供頼むマスという辺りで、次のエントリーへの橋渡しをしたところで、レポート終わりとしよう。読んだ人、参加した人、お疲れ様。