有形ランペイジ -Inst Edition-@六本木Orange Lady

葉月の陣のメモが書き終わらないうちに、次の有形ランペイジのライブが来てしまった。今回はInst Editionということで、今までとは違った曲やアレンジが聴けるんじゃないかという期待と、演奏技術に信頼を置いてるバンドメンバーのみという安心感?を胸に参加してきたので軽くレポ。9月23日。(3000+500)

いつもの

会場のOrange Ladyは初利用。前回の葉月の陣のMCで、Orange Ladyはラーメンが凄く美味いと白井さんが力説してたのに惹かれて、今回のチケットを買ったというのは少なからずある。六本木駅から徒歩3分なのに静かな住宅街があるのにもビックリしたし、そのど真ん中にライブハウスがあるというのにもビックリした。扉を潜って中に入ると先ずに目に付くのが10人掛けのカウンターと、『特製ラーメンいかがですかー』というお姉さんの呼び声。ライブハウスに入ったと思ったのに、開口一番にラーメンを薦められたのは流石に初めての経験だったw
ラーメンは終演後にも食べられることを確認して奥に進むと、そこはライブステージの2F部分になっていた。そこから、小さな螺旋階段を降りたところがステージフロアで、後方のバーカウンターからドリンクを貰い、40席ほど用意されていた椅子に腰掛ける。前過ぎると演者さんが近すぎてキョロキョロしづらいので、陣取ったのは中央やや後方。
ステージ上は今までのライブとは異なる配置で、上手からギターの佐々木さん、ドラムの今井さん、ベースの二家本さん、キーボードの白井さんという並び。この4人の場合は『有形ランペイジ4』となるらしい。なお、プロデューサーのささくれさんは2幕の後半から出演で下手の奥に陣取ってた。佐々木さんの足元に大量のスイッチャー?があったのが印象的。過去2回みたく曲調に合わせてギターを持ち替えるのではなく、1本のギターで多様なエフェクターを駆使することにしたみたい。
開場前には閑静な路地とはいえ1桁しか並んでるお客さんが居なかったので少し不安だったけれど、始まるころには座席は全部埋まっていて立ち見もチラホラいた模様。終演後にラーメン食べながら漏れてくる会話を聴いてた分には、佐々木さんが講師をしてるギター教室の教え子さんだったり、同僚さんとかも居た風だけれど、一般客としては女性の方が多かったかな。やっぱり、ささくれさんの世界観は女性のが合うというか、嵌るんじゃないかと思う昨今。

本編

程ほどにラフな格好でメンバーが登場。HPのアーティスト写真みたいに、全員がビシッと決めて演奏する日は来るのだろうか。いつも通りにセトリを書き連ねつつちょこちょこコメントを挟む感じで。20分の休憩を挟んでの1時間ずつの2部構成って、クラシックコンサートに似ているのが少し面白い。

1st

01.しゅうまつがやってくる!(inst)
02.Jack-the-Ripper◆

過去2回あった有形ランペイジのライブの1曲目は、どちらも白井さんが作曲した『Amaranth』だった。あの軽快なキーボードのコードによるイントロは、これからライブがスタートするんだと凄くワクワクするので、とても気に入ってたのだけれど、今度のアルバムには収録されないのが残念。この日の1曲目は聴きなれないフレーズだったので軽く身構えたのだけれど、佐々木さんがメインメロディを弾き始めると同時に『しゅうまつ〜』なのだと気付いて、驚くと同時に嬉しくなった。
葉月の陣の後にパブサ*1で、有形ランペイジが非ささくれ曲を演奏することに対する否定的なコメントを見た。アルバムにささくれ曲が2つしか収録されないのを悲しんでる人も見た。いま有形ランペイジを積極的に応援してる人の一部が、ささくれさんの音楽のみのファンなのは不思議ではないし、自分も去年の12月に1stライブへ参加した時はそのポジションだったので、彼らの心情も分かる。あと、直後のMCで鏡音リンの名前が直ぐに出てこないメンバーを微笑ましく見れる自分みたいなのもいれば、一方でイラっとする人もいるのかなーと思ったりもした。
自分は、昨年12月のライブで有形ランペイジのバンドメンバーの演奏に魅了されたのもあり、今はセールスやプロモーションの部分も含めて有形ランペイジを見守っていくというスタンスなので、非ささくれ曲やゲストボーカルもそれはそれでアリかもねという感じなのだけれど、やっぱりささくれ曲を演奏する有形ランペイジが一番好きだ。この日のセトリが全て有形ランペイジのメンバーのオリジナル曲だったことは、ライブ後の自分の満足感に大きく影響したと思ってる。
個人的な意見だが、有形ランペイジの1枚目のアルバムは、今のメンバー6人とささくれ楽曲という縛りを作ってしまった方が、形としては綺麗だったと思う。より広く、色んなPのボカロを聴くリスナーにも興味を持ってもらうつもりでラインナップを並べたのだと思うけれど、一番熱心なファンになってくれる可能性が高いのはささくれさんファンだろうし、そこへのPRをもっと手厚くして良いんじゃないかとは思った。
ただ、コミケで新譜を買い求めて行列を作る人と、ライブまで足を運ぶ客層ってのは全然リンクしないみたいだし、手を広げればそれだけ色んな思惑・嗜好をもったお客様が集まるわけだし、アーティスト活動って難しいんだろうなとは思わずに居られない。1リスナーでしかない部外者の戯言なんで、書いておいてなんだが無視して貰いたい。ただ、エゴサーチして非公式RT連打されるのは、ちょっと言及を躊躇わせられるんで、程ほどでお願いしたいとこ。
閑話休題。ちょっとワウっぽいエフェクトのかかったギターや軽やかなピアノで進む『しゅうまつ〜』は、原曲の爽やかな感じが残ってて心地よかった。このまま終末シリーズを完走しちゃうのか?といった淡い期待は鮮やかに裏切られ、次は事前告知もしていた切り裂きJack。バイオリンの印象が強かったこの曲なのだけれど、ギターとキーボードというメロディを担当できる楽器が2つあることで、単調にならずにバンド用にアレンジされていてカッコよかった。考えればささくれさん達が演奏して動画をあげてるくらいだから、譜面も存在したのだろうし、コストがそこまで掛からなかったのかもしれない。とはいえ、後半には各楽器のパートとかも付け足されていて聴き応え抜群の1曲となっていた。

03.The De'but
04.Home

次の2曲はどちらも有形ランペイジ4のメンバーが作曲し、来月のアルバムにも収録されるナンバー。『The De'but』はキーボードの白井さん作曲で、タイトルからして今度のために書き下ろしされたのかな。この楽器を使って作曲をするとこういう癖が出易いみたいなのは、本職さんならきっと理詰めで分かるんだろうけれど、曲を聴きながらなんとなく白井さん作曲かなと思ったのが合ってて地味に嬉しかった。CDではどういうアレンジに仕上がってるのか楽しみ。多分シンプルになってるんだろうな。
また話が逸れるけれど、なんでシンプルになると思ったかを書いてみる。これは『home』にも言えるけれど、彼ら(有形ランペイジ4)の作る楽曲はJ-POPみたいにガチガチに縛られて作られてはいない。つまり、「イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ、間奏、Aメロ、Bメロ、サビ、Cメロ、サビ、アウトロ」といった定番の流れが、決められた小節数だけきっちりと存在する音楽ではないらしい。当然、主旋律とも言える繰り返し登場するメロディや、全体としての曲の流れは存在するのだけれど、その流れを構成する中身の細かい部分はアドリブで進んでいき、プレイヤーの手に多くが委ねられている気がする。
自分が聴く音楽のジャンルや、足を運ぶライブが、前述したJ-POP方面に偏っていたので、有形ランペイジの1stライブではこの点に最も感銘を受けた。ライブ冒頭の非ささくれ曲で、有形ランペイジ4のメンバーがお互いの挙動と、そこから紡ぎ出される音楽に全神経を払いながらも楽しそうに演奏してる姿は文字通りカルチャーショックだった。
更に話が逸れたから戻す。CDに収録される音源はパートごと別々に録るだろうし、そうすればライブで生き物みたいに変化していくのとは違ったスタイルになるだろう。他の曲との尺バランスもあるだろうし、ライブよりはシンプルな構成になるだろうなーというのが書きたかっただけ。
佐々木さん作曲の『home』はアルバムに収録されるのが決まって一番嬉しかった曲。上に書いたように自分の中に新しい要素を持ち込んでくれたし、有形ランペイジライブ皆勤賞の曲というのもあるし、何より有形ランペイジでの演奏がとても映えるのだ。ミディアムテンポの落ち着いたメロディから始まり、ギアチェンジしてロックなフレーズからのベースソロ、圧巻のドラムソロから再びメインメロディが戻ってきた時の安心感は、家に帰ってきた時のそれに近くてタイトルの妙を唸るばかり。ギターとキーボードが互いの腕を競うかのように交互にメロディを奏でる終盤のパートも楽しいし、4人の美味しい部分がギッシリ詰まった1曲になっている。アルバムの発売が待ち遠しくてならない。

05.Way back
06.再鋼築フィクション(inst)

前半最後の2曲は続けての演奏ではなかったけれど、スペースの都合で纏めてしまおう。『Way back』は佐々木さん作曲のスローでまったりとしたナンバー。変拍子こってりだったり、ランペイジの名の通りに荒ぶる楽曲だらけのセトリのバランスを取る役目を担った曲。二家本さんのベースが奏でるメロディが照明にも合っててムーディだった。偶に見せるチョッパーもカッコいいのだけれど、ベースじゃ珍しい和音を挟み込んだ奏法も良かった。
そして前半最後は、この曲をよくぞ選んだなーと事前の発表で半分感心して半分呆れた『再鋼築フィクション』。これを選曲をしたのは意外にもドラムの今井さんとのこと。曲を聴きながら採譜してみたと言ってた気がするし、ドラマーからすると曲中で何度も拍子が変わるのは面白い上に心臓役として叩き甲斐があるのかも。まだ自分の中で原曲を消化しきれてないので感想は書きづらいのだけれど、鋼という文字がタイトルに含まれてるのを音の方面から認識できた気がする。

2nd

07.TOBIUO

後半はドラムの今井さん作曲の『TOBIUO』でスタート。青く爽やかな音が散りばめられてて、上手いタイトルだなーと思ったのだけれど、風景を想起させる音作りが出来る技術の方を褒めるべきか。これで有形ランペイジとしては二家本さんを除く5人の自作曲が披露されたわけで、演奏だけに留まらず作曲もできるメンバーの集まりだからこそ、色々な楽曲を自分達のものへと落とし込むことが出来るんだろうな。二家本さん作曲のも聴いてみたいので、その機会を楽しみにしておこう。この曲は発売中のドラムマガジンにも収録されてるらしいのでチェックしてみたい。

08.万有エレキテル
09.SeventH-HeaveN(inst)

『metrojackz』の新曲がセトリに入るのは予想してなかったので、曲紹介で軽く声をあげてしまった。曲前のMCではトークには参加せず、黙々と運指の確認をしていた白井さんが鍵盤を刻み続けるジャジーな1曲。再現度が半端ない上に、疾走感に溢れていて、有形ランペイジのInstライブに望んでいたものがそこにはあった。中盤の『ジャン ジャン ジャン…』と延々と刻み続ける箇所*2が、CDの4倍くらいに増量されていてお茶目な遊び心が見えた。みんなきっちり回数を心の中で数えていたんだろうかw
そして、これまた予想外なミク曲のインストアレンジ。Aメロのメロディをピアノ寄りの音色でキーボードがしっとりと奏でると、佐々木さんがきっちりとギターで受け継いでいく。ボーカル曲のinstアレンジでは、基本的にギターとピアノがボーカルパートを担当するのだけれど、その役割分担だったり、スイッチだったりがよく練られていて面白かった。Instにはモチロン歌詞が無いので、1コーラス目と2コーラス目が単なる繰り返しになると飽きさせてしまうかもしれないわけだし。

10.世界5分前仮説(Inst)
11.マリィの世界(Inst)

ここから登場するプロデューサーsasakure.UKの呼び込みを綺麗に忘れる佐々木さん。来月のアルバムのリードトラックであり、ささくれさんが有形ランペイジのために初めて書き下ろした曲も、この日に合わせてインストアレンジされていた。最近、ささくれ楽曲の考察動画を一通り見終わったので、この曲の歌詞も気になるところ。
『マリィの世界』は1stライブ以来。marinaさんの代わりにメロディを担当する佐々木さんのギターがむせび泣いてて、しっとりした白井さんのピアノと好対照。ここまでライブ映えするとは『ラララ終末論。』を聴いてた時には思わなかった。bpm的にも良いアクセントになるし、有形ランペイジのライブの定番になればいいな。

12.ロストエンファウンド
13.タイガーランペイジ

ライブの終盤では、ボカロのボーカル音源とバンド演奏を合わせてみようという特別な試みがなされた。満を持してささくれさんが発表したのに、既にベースの二家本さんがバラしてたので、ある意味で有形ランペイジっぽい空気感が漂ってたけれどw 
ミクやリンのボーカルのボリュームがかなり大きかったのもあるし、他の楽器とは違う所から響いてくるような気がして、悪く言えば馴染まない、良く言えば埋もれないなというのが率直な感想。他の楽器とは違う周波数で鳴ってるみたいな上滑り感があるんだけれど、演奏に負けることなくボーカルが主張してくるってのは曲のファンからすると嬉しいことだと思う。好きか嫌いかでいえば自分は好きだった。一度ボタンが押されたら後はマイペースに歌うので、演奏とミリ単位でズレてるかなーという感じもあったけれど、そこらは慣れれば演者側が歩み寄れる範囲だと思う。marinaさんのボーカルも葉月の陣ではかなりシックリ来たので、声質や曲調に合わせてどっちもいけるみたいなのが個人的には理想かな。ただ、この組み合わせが最も望ましいとする層も居るだろうとは思った。

14.世界五分前仮説(Inst)

アンコールとして最後にもう1回。佐々木さんが当初のencoreの位置を間違えたという説も無きにしも。お客さんに「聴きたい曲あるー?」みたいなフリを軽くしてたけれど、練習なんて一切してないだろう『bAd Companyzを』と声に出す勇気は無かった。『ハロプラ』や『16ビット』なら彼らは即興でいけたんだろうか。
今井さんがチョークをするBメロ?の変拍子の所が、初めて聴いた時から好きだったんだけれど、アンコール時はスティック回しも交えてノリノリで叩いてたのがカッコよかった。有形ランペイジ4の面々が演奏してる時の表情や仕草はそれぞれに特徴的で、手元が見えなくても顔を見てるだけで楽しかったりする。みんな良い表情してるんだ。

終わりに

てことで、終演後は混み出す前にサクサクと鶏白湯ラーメンを平らげて(なるほど、美味い!)引き上げた。ライブ中にお酒は飲めるし、ライブ後に直ぐカロリー補給はできるし、とても良い箱だった。今回は食べられなかった豚骨醤油味のラーメンを食べに、少なくとももう1度は足を運びたい。間に睡眠を挟んで書いたせいで、レポの後半が尻すぼみになってるのは平にご容赦。
今回のイベントが凄まじく満足度が高かったのと、3ヶ月連続になってしまうのと、ワンマンじゃないのとで、来月のレコ発イベントに行くかは未だ決めてないのだけれど、アルバムの方はしっかりとゲットして聴きこもうと思う。ということで、参加した人、読んだ人、お疲れ様。

*1:Tweenというtwitterクライアントにおけるtwitter検索機能『Public search』の略語。コピーライツ俺。

*2:CDで言うと2:40あたり