坂本真綾の満月朗読館 最終夜『月の珊瑚』

9月から毎月の満月の夜にustreamで配信されていた、坂本真綾の満月朗読館の最終夜に参加してきたので軽くメモ。
『坂本真綾の満月朗読館』 | 最前線
チケ取りを頑張ったので六本木の生朗読会場での参加だったけれど、終了後の打ち上げが20人規模だったので、単純計算で参加者の3%以上が知り合いだったぽい。恐ろしいクラスタだなー(棒
いつかクラスタにもちょっと触れたいけど、以下は本編の内容のみ。

開演前

会場のTOHOシネマズ六本木は初利用。そもそも六本木ヒルズ自体が、5年前の夕凪ループのフリーイベント以来の訪問。開演の2時間程前に会場に付いて、グッズ売り場で逡巡した挙句に、満月朗読館デザインのマグとブックカバー、『月の珊瑚』のブックレットを購入。物販の列はそのまま開演まで途切れることが無かったので、男女の店員さんが可哀想だった。品物の扱いが丁寧で回転遅かったから、仕方ないけれどもね。
客層は日曜のらっきょ程ではないにしろ、型月ファンも少なくないので7割強が男性。季節的には朗読中の咳もある程度已む無しなのだけれど、開演後や休憩明けの朗読してる最中に、遅刻者が席に着こうとするのにはチト閉口。スタッフに止めて欲しかった。
自分の席は下手前方で、ほんの5m先に真綾が朗読するステージがあるという神ポジション。カミシモの2択に大勝利したのは嬉しい限り。ステージの上には1組のテーブルと椅子があり、テーブルの上には読書灯、ビデオカメラ、『月の珊瑚』マグカップティーポットが置いてあった。でも、後ろの2つは雰囲気作りのみで利用されてなかったと思う。

本編

微笑ましいやら痛ましいやらの司会の前口上の後に真綾が登場。ロングのノースリーブワンピースで、胸から上が白、下が黒というデザインだったけれど、椅子に腰掛けると見事にお腹の部分がふんわりと膨れてて、マタニティドレスかと見紛うばかりだったのは、ここだけのお話。
ヘアメイクは『秘密』のPVのような前髪パーマだったけれども、横から後ろにかけて、満月朗読館のロゴになってる、シルエット女性の横顔をイメージさせるように丸く整えてあって良かったと思います。カメラワークは……

月の珊瑚

まずはシナリオ面。以下のアドレスで期間限定ながら全文読めるので、興味ある人はどうぞ。
http://sai-zen-sen.jp/works/fictions/tsukinosango/01/01.html
奈須きのこの作品で読んだことあるのは、好きな順に空の境界月姫Fateの3作品。彼の作品の魅力は、舞台設定の面白さとか、厨二心をくすぐる構築された概念や、それをフルに活用したキャラクターだと思ってるので、平坦で理解し易いことが求められるだろう朗読用の書き下ろしで、どんな作品を仕上げてくるかは興味があった。
簡単に言うなら、エッセンスとして童話のかぐや姫を混ぜた近未来SF、若しくは伝奇になるのかな。あらすじをちゃんと書こうとすると、説明しづらい設定のせいで長くなるので省略。全文読んでも1時間もかからないから、各自で補完してください。登場人物は少ないながらも、種としての生命と遺伝子や、堕落した人類とサバサバした当事者・観測者、ヒトガタに押し込まれた星の脳、といった要素が物語に落とし込まれてて、奈須きのこの作品だなーと。
現地で一度聴いただけだとイマイチ理解できなかった部分も、2度3度と文字を追うことによって、大体は掴めた気がするけれど、1章の小型宇宙服とデザインベビーの彼との関係とかイマイチ自信ない。多分イコールだと思うのだけれど、にしては性格が丸くなりすぎてる気もするし…
ビジュアル面は、宇宙服の彼や、2章の少女像みたく、可愛いデザインの少しらしくないキャラが出るなーと驚きつつも、姫さんや3章の和服verみたく、これぞ武内キャラだなーという金髪さんも見れて満足。ビジュアルブックには少し不満が残るけれど、どっかで解消されると期待してる。竹箒日記できのこがシナリオと絵の同期について、言及してるのとかも興味深いんだけれど、そこらは次の部分にも関わってきそう。

ということで、真綾の朗読面。
これだけの近距離で、これだけの長時間、というのは初めてだったので、どちらかといえばスクリーンよりは真綾を見ながら、内容に耳を傾けてた。それなりな回数噛んでたけれども、そこは生放送のご愛嬌ということで、個人的には瑣末な問題。指折り数えてたのに深い意味はない。
前述した絵と朗読との同期をどのように取っていたかは、どっかで種明かししてもらいたい点。全体のペースだけでなく、次に声にする文章にどの程度の声量を出すかや、どこで息継ぎを挟むかなど、意識しなければならない点も多く、台本の下読み・練習をしっかりと積んで来たのだと思う。言葉を発する前に、想像してた以上に大きく息を吸い込んでたのが印象的。
実を言うと、話の筋を追うのと、真綾の声を聴くのと、2つの意識がバラバラに働いててしまい、前半部分はちょっと消化不良だった。でも、休憩明けからは段々と朗読に引き込まれていった気がする。1つには、単純に物語の大枠がぼんやり見えてきたことで、安心して話に向き合えたからで、もう1つには、3章の真綾のとある台詞がもの凄く脳に刺さったから。

もうちょい詳しく書く。
読んだ人には今更の話だけど、『月の珊瑚』は全4章から成っていて、2章と3章の間を境に対称的な内容になってる。1章と4章は"現在"の少女像の子孫の姫様と小型宇宙服の遣り取りがメインだし、2章と3章は"むかしむかし"の月に渡った極度の人間嫌いと少女像のお話がメインになっている。特に2章と3章は、2人の出会いから別れまでを、双方の視点から描写しているので、話の大筋は一緒である。
さっき書いたとある台詞というのは、3章で一番最初に少女像が喋る“これで、ヒトのように見えるでしょうか?”という部分だ。この部分を聴いた時に、なんて可憐な声だろうとゾクっとする程に感動したのだ。人間嫌いの彼が受けた衝撃を追体験したような気分になった。単なる声に身震いするというのも、10年以上ファンをやってながらに恥ずかしい話だけれども、そこから更に物語に没頭できたので悪くはなかった。言い訳すれば、和服姿のイラストが美麗だったというのも、ちょっとは影響してると思う。
ちなみに、この少女像の声は休憩前の2章でも既に出してたりする。それなのに3章で初めてそれを意識したのは、2章と3章で地の文を読み上げる声が違ったからだと思う。2章は少女像視点なので、地の文章を読む声も女性を意識させるように少し高い。それに比べて、3章は人間嫌いの男性が記録した音声メモということもあり、相当低めの声で朗読している。要は地の文章と台詞との声の落差であるが、別にギャップ萌えではない。
6月の朗読劇の時も思ったけれど、地の文と台詞にどういうメリハリを付けるかってのは、朗読の最重要ポイントなのかも。もーちょい噛み砕いて書くべき内容なんだけれど、自分でも消化できてないので今回は諦める。

終わりに

最後の部分を書けないままに、新年を迎えてしまったのが情けないやらだけど、筆が進まないにも程があるんでギブアップ。この満月朗読館は来春メディア化されるそうだけど、そこで資金回収して、また新しい作品の朗読が始まってくれたらなと期待します。
現場参加した人、劇場行った人、ustream見てた人、最後まで読んじゃった人、お疲れ様でした。